岸田文雄首相は31日の衆院本会議で、日本の大手商社が参画するロシア極東の石油・天然ガス開発事業「サハリン2」について「撤退しない方針だ」と明言した。

 サハリン2をめぐっては、日本の三井物産と三菱商事が参画。日本は液化天然ガス(LNG)全輸入量のうち、約8%をサハリン2から調達している。

 英国の石油大手シェルは、ロシアのウクライナ軍事侵攻を受けて撤退を表明。日本政府の対応に世界中の注目が集まっていた。

 岸田首相は撤退しない理由について「長期かつ安価な液化天然ガスの安定供給に貢献しており、エネルギー安全保障上、極めて重要なプロジェクトだ」と語った。

 岸田首相の決断にネット上では賛否が割れている。「自ら安いエネルギーを手放す必要はない」「撤退したら中国企業が権益を取得する恐れがある」と支持する声がある一方で、「経済制裁しているロシアに利を与えてどうする」と反対の意見も見られた。

 ロシアのウクライナ侵攻が長期化することで、資源高でインフレが加速し、エネルギーを輸入に頼る国ほど景気への懸念が大きくなっている。

「日本国内の燃料代、電気代が上がり、国民生活に打撃を与えています。為替変動も激しいなか、この状況を国民がどこまで許容するのか。ロシア情勢が長期化すれば、国民が納得できるだけの経済対策が打てるかにかかっています」(自民党議員)

 来月末めどの緊急経済対策にかんする自民党内の調整を高市早苗政調会長に委ねた岸田首相の判断は吉と出るのか、注目が高まっている。