韓国の保健福祉省は4日、中部・大田の病院で3日に死亡した男性(82)が中東呼吸器症候群(MERS)コロナウイルスに感染していたことを確認したと発表した。3次感染で死亡した初のケース。5日には新たな死者・感染者が報じられ、韓国の感染確認は死者4人を含む計41人となった。感染者と接触し自宅や医療機関での隔離対象となった人は1600人を超えた。

 一方、ソウル市は4日、3次感染者の医師(38)について、高熱などの症状が出た5月30日の午前中の3時間、1565人が参加するシンポジウムに出席し、多数が接触した恐れがあると発表した。その夜、医師は家族と外食。31日にはせき、痰、高熱が出ながらもシンポジウムに1時間出席。医師はその直後に感染が確認された。また軽微な症状が出た29日は診療を行っていた。

 この医師の感染確認時点を保健福祉省は6月4日だとしているが、市は1日だと説明。同省は4日、医師の行動は把握していないと説明した。

 それだけではない。韓国紙「ハンギョレ」によると、医師に感染させた2次感染者の男性(35)は先月27日にソウル行きのバスに1時間半も乗っていたという。感染危険範囲2メートル以内でしかも密閉空間であるバスに最長90分も同乗した人たちがいたということだ。男性はソウルに到着したところで呼吸困難になり、救急車で運ばれた。そのときはこの感染者がMERSとは分からなかったため、救急隊員は確実に直接接触した。前出の医師はこの男性を診察し、感染した。男性は30日にMERSと診断された。同乗者は特定できていない。

「なぜ世界の中で韓国だけヒト―ヒト感染しにくいMERSが広がっているかというと、ウイルスが変異したという説もあります。それよりも、くしゃみをするとき手で口元を覆わなかったり、食材の使い回しなどの点も指摘されています」と韓国事情通。

 韓国首都圏の医療機関で感染者が増え続ける中、病院外の地域社会でも感染への懸念が拡大。中国や台湾などから韓国への旅行のキャンセルも相次ぎ、経済への影響も出始めた。