岸田文雄首相(64)は米国のバイデン大統領が打ち出したロシア産原油の輸入禁止措置をめぐり難しい局面に立たされている。

 9日、岸田首相は官邸で、米国がロシア産原油の輸入を禁止したことを受けて「バイデン大統領は同盟国の多くが、参加する立場にないことを理解している」と話した上で「わが国としてはエネルギーの安定供給と安全保障を国益としてしっかり取り組む」とした。

 政府はロシアがウクライナに軍事侵攻を仕掛けてから、先進7か国(G7)と歩調を合わせていたが、エネルギー問題に絡むと様相が異なる。

 日本は原油を海外に依存している国だ。米国と歩調を合わせてロシアの制裁に踏み切れば、日本のエネルギー安全保障に直結する大きな問題にぶち当たる。

 政府関係者は「わが国はエネルギー安全保障の観点から、中東依存の脱却を進めています。ロシアからの輸入は昨年まで原油が3・6%、液化天然ガスが8・8%です。米国の同じ制裁をロシアに行うとなれば、エネルギー供給の心配が払拭できなくなります」と話した。

 ウクライナの戦況はロシア軍が首都キエフを包囲する動きを強めていることから、今後さらに事態の悪化が予想される。

「岸田首相はロシアに対して一層の制裁強化策を行った場合、原油価格が急激に上がり、国民生活に大打撃を与える可能性があります」(同関係者)

 トップリーダーとしての決断が迫られている。