アシアナ航空機が広島空港で着陸に失敗した事故で、滑走路脇に残されていた事故機が4月26日に、ようやく撤去、駐機場脇に移された。これで、同14日の事故後、厳しく制限されていた離着陸の条件が緩和された。これまでは滑走路脇に事故機がある影響で、着陸時の厳しい視界制限が出ていたがどうにか「雨の日は全便欠航」なんてこともなくなりそう。ただ運輸安全委員会の調査のため、しばらく空港敷地内に仮置きされる予定だ。

 事故後、地上からの視程(見通し)が5000メートル以上などとされた離着陸の条件は、1600メートル以上となった。混雑するGWには欠航率が下がると見込まれる。

 事故で損傷した計器着陸装置(ILS)の本格復旧は11月ごろで、5月中旬をめどに、仮設の装置を設置する。事故の影響は夏休みの多客期まで及びそうだが、悩みのタネはほかにもある。

「それ以上に事故機をどうするのか。空港に置きっぱなしだとイメージが悪く、“負の遺産”になりかねない」と話すのは、地元の産業関係者だ。

 アシアナ航空は事故機を解体するのか、修理して飛ばすのか、明確な態度を示していない。

 多くの旅客が航空便より新幹線に切り替える中、増えているのはヤジ馬ばかり。事故機は滑走路脇のフェンスまで十数メートルの位置でからくも停止したが、その事故現場はくしくも航空ファンがウェブで“順路”を公開している撮影ポイントのすぐそばだった。めったに起きない航空機事故の現場写真を撮ろうと、航空ファンやアマチュア写真家が続々とフェンス間近に詰め掛けている。

 撮影に出掛けた30代の男性航空ファンは「広島や福山ナンバーの車が、撮影ポイントの入り口となる林道にズラッと並んでいた。みんな望遠レンズを抱えて黙々と急坂を上っていた。周囲は森林公園になっていて、犬の散歩ついでに様子を見に来るオバちゃんもいた」と振り返る。

 仮置き場となる草地は、発着便や展望デッキからよく見えそうな場所だけに、地元や空港関係者らはイメージ悪化が長引かないよう、一日も早い撤去を願っている。