林芳正外相は英中部リバプールで11日(日本時間12日)に開かれた先進7か国(G7)外相会合の夕食会で、韓国の鄭義溶外相と短時間立ち話をし、元徴用工や元慰安婦を巡る問題について韓国側に適切な対応を強く求めた。11月の林氏の外相就任後、両氏が言葉を交わすのは初めて。日韓を健全な関係に戻すため、外交当局間の協議や意思疎通を加速していくことでは一致した。日本外務省が12日、発表した。こじれにこじれた日韓関係だが、専門家によると、韓国が仏像問題で譲歩する可能性が出てきたという。

外務省関係者によると、立ち話の事前調整はしておらず、鄭氏側が歩み寄って会話が始まった。元徴用工問題や韓国警察庁長官による島根県・竹島上陸を受けた関係悪化の影響で、両氏は電話会談も行っていなかった。

 韓国事情に詳しい文筆人の但馬オサム氏はこう語る。

「韓国は今、経済的には完全に死に体の状況です。通貨スワップを含め日本からの助けを喉から手の出るほど欲しがっている状況にあります。しかし、長年、韓国には甘い対応をしてきた日本も、度重なる韓国の合意、条約破りに完全に堪忍袋の緒が切れた状態です」

 先日の竹島上陸暴挙に対して、日本はワシントンで開かれていた日米韓の次官級協議での共同会見をボイコットするという強い抗議の態度を示した。

 但馬氏は「韓国も日本の本気度を思い知ったのではないでしょうか。もはや、何かしらの政治的妥協なしには、日本が同じテーブルにつくことはないと覚悟したはずです。慰安婦問題での日本非難はあの国の国是のようなものですから、これを“解決”することはできません。元徴用工問題も同様です」と言う。

 では、数多い日韓のトラブルの中で、韓国にとって解決のハードルが比較的低いのは何か? それが仏像問題だ。

 2012年に韓国窃盗団が対馬の観音寺から盗んで、今は韓国の浮石寺にある仏像について、新しい動きが見えてきそうだ。韓国内の代表的鋳物技能保有者であるイ・ワンギュ氏(京畿道無形文化財)とムン・ヨンスン元文化財鑑定委員は先日、「仏像はわが国伝統の蜜ロウ鋳造方式ではなく鋳型を結合する現代の分割鋳造方式で制作されたと見られる。現代金属であるアルミニウムを使った時に現れる白苔もあちこちで発見されるなど典型的な偽作だ」と主張。そして、韓国紙・東亜日報が「偽作なら日本に戻せばよい」と報道した。

 但馬氏は「東亜日報がこのような報道をするということは、日本に対して仏像返却に応じる用意もあるというサインにも受け取れます。どう解決するかといえば、韓国側が『仏像が偽物である』との鑑定を発表する。偽物だから返すといえば、国内的にも一応言い訳が立ち、その上で『日本人は偽物の仏像をありがたく拝んでいる』とあざ笑えばいいのです。この“妥協”で日本から援助を取り付けようというのでしょう」と話している。