経済産業省は6日、東京電力福島第一原発の処理水の海洋放出を巡り、今月中旬に予定していた国際原子力機関(IAEA)の調査団の来日を、来年1月以降に延期すると発表した。新型コロナウイルスの新変異株「オミクロン株」の感染拡大が理由。

 調査団は、第一原発を訪れて放出する水の状態や手順などについて東電から聞き取り、安全性に関する見解をまとめる。中国や韓国が海洋放出に懸念を表明する中、国際的な透明性を高めるのが狙い。

 経産省によると、今月中にオンラインで事務レベルの会合を開き、東電がまとめた放出時の放射線の影響予測について検証を受けるという。

 この処理水放出問題について、市民団体が先日、東京都港区の台北駐日経済文化代表処を訪れ「台湾政府は日本政府の決定に反対してほしい」と協力を要請した。

 要請行動を起こしたのは、全日本消費者団体会議(清水義一議長)のメンバー35人。政府の海洋放出の閣議決定に対し、中国、韓国のほか、地元の漁業団体、グリーンピースなど環境団体が依然反対している。一方、台湾の与党・民進党は日本政府の閣議決定に追随し黙認する構えであることから、要請行動に至ったという。

 同団体は「日本および台湾の消費者の安全と健康を守るために一緒に反対の立場に立ってほしい」とし、日本の水産物をはじめとする食料品の輸入解禁を訴えた。

 メンバーの佐伯美智雄さん(28)は「福島をはじめ東北地方は日本政府が言う復興に逆行し、逆風にさらされる。同じ海に囲まれた台湾が、われわれ東北の住民と同じ視線に立って、日本政府に追随することなく、日本政府の閣議決定に反対してほしい。台湾は福島をはじめ、東北地方の住民の苦しみを理解して寄り添うべきだ」と話している。