佐藤優氏 開戦前夜のロシアとウクライナ…日本はどう対処すべきか

2021年12月06日 16時00分

佐藤優氏(東スポWeb)
佐藤優氏(東スポWeb)

【マンデー激論】ロシア・ウクライナ関係が緊迫している。そこにNATO(北大西洋条約機構)が介入しようとしているから、事態が一層厄介になっている。

<北大西洋条約機構(NATO)は11月30日の外相会議で、ウクライナ周辺で軍備を増強しているとされるロシアに対し、「団結して攻撃的な行動を抑止する」と確認した。ストルテンベルグ事務総長は「最悪の事態に備えねばならない」と強調。2014年のクリミア半島併合に続くロシアによるウクライナ侵攻もあり得るとの見方を示した。/(中略)ストルテンベルグ氏は記者会見で「ロシアの意図は読み切れない。事態は予測不能だ」と発言した。偶発的な衝突も含めて危機感をあらわにし、「ウクライナに再び侵攻すれば、ロシアは高い代償を払うことになる」と警告した>(1日「朝日新聞デジタル」)

 この種の圧力をNATOがロシアに対してかけるのは逆効果だ。NATOに関しては、本来、ワルシャワ条約機構と同時解消するはずだったにもかかわらず、米国がNATOがロシアを敵視することはないと約束したので、当時のエリツィン大統領がNATO存続を容認した経緯がある。

 しかし、その後、NATOは旧東欧諸国と沿バルト3国に拡大し、プーチン大統領もロシア国民もNATOにだまされたという被害者意識を持っている。今回のストルテンベルグ事務総長の発言をロシアは最後通牒と受け止めている。

 ロシアとウクライナの国境は開戦前夜のような緊張が漂っている。ウクライナはロシアが国境地帯に9万人規模の軍隊を結集している。NATOもこれに対抗して軍事演習を行った。
<プーチン大統領は(11月)30日、モスクワで開かれたフォーラムで「ロシアは自分の国境近くで大規模でかつ、予定されていなかった演習が行われることに懸念を感じている」とNATO側を非難した。「我々の国境の20キロ先で戦略爆撃機が飛んだ。そこには核兵器が搭載されているかもしれない。我々には脅威だ」と述べた>(前掲「朝日新聞」)

 ウクライナのゼレンスキー政権は反ロ・ナショナリズムをあおることで自らの権力基盤を強化しようとしている。NATOは、ゼレンスキー政権のポピュリズムに踊らされているというのが実態だ。

 岸田文雄首相はこういう筋の悪い紛争からは極力距離を置いて、日ロ間の懸案の解決に努力した方がわが国益にかなうと筆者は確信する。

 ☆さとう・まさる 1960年東京生まれ。85年、同志社大学大学院神学研究科を修了し、外務省に入省。ソ連崩壊を挟む88年から95年まで在モスクワ日本大使館勤務後、本省国際情報局分析第一課で主任分析官として活躍した。2002年5月、背任容疑などで逮捕され、09年6月に執行猶予付き有罪判決が確定した。20年、「第68回 菊池寛賞」を受賞した。最新著書は「ドストエフスキーの予言」(文藝春秋)がある。

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