鯨類調査船団が28日に山口県下関市の下関港に入港した。1月に調査捕鯨のため南極海に向けて出港していた。昨年3月に国際司法裁判所(ICJ)で南極海での調査捕鯨中止命令が出ていたため、クジラを捕獲しなかったことが注目されている。

 1987年に始まった南極海での調査でクジラを捕獲しなかったのは初めて。勇新丸(724トン)と第2勇新丸(747トン)の2隻はクジラの頭数を目で数えるなどした。日本の捕鯨調査には反捕鯨団体のシー・シェパード(SS)が妨害するのが風物詩となっているが、今回はなかったという。

 クジラを捕まえないとはいえ、あのSSが何もしないとはどういうことなのか。捕鯨問題に詳しい政府関係者は「そもそもSSの目的は日本の捕鯨を完全にやめさせることではないと考えています」と話した。

「SSの目的は反捕鯨活動による寄付金集めです。寄付金を集めるためには寄付をしたいと思わせる“絵作り”が必要で、捕鯨しているところの映像を公開して共感を呼ぶのです」(同関係者)。捕鯨をしないのであれば、絵にならず抗議もいらないというわけだ。

 捕鯨文化を守る和歌山県太地町にはイルカ漁の期間、SSが常駐しているといわれている。昨年秋に太地町を観光に訪れた男性は「クジラ料理を出すレストランは普通に営業していたし、紀伊勝浦ではイルカ料理も食べることができました。思っていたより静かなものでした」と振り返る。

 前出の政府関係者は「クジラもイルカも実際に漁をしているところで抗議をした方が絵になる。何もないところで抗議しても寄付金は集まらないじゃないですか。反捕鯨がビジネスになっている側面があるのです」と指摘した。

 政府は捕獲頭数を3分の1に減らす新計画を国際捕鯨委員会に認めてもらうことで、捕鯨再開したい考えだ。