経営方針をめぐる“お家騒動”で大揺れの大塚家具が連日注目されている。長女の大塚久美子社長(47)は26日、都内で会見を開き、前日に父親で創業者の勝久会長(71)が久美子氏の解任を求めたことに真っ向から反論した。創業者一族の内輪モメが公になることは、上場企業にとってあり得ない恥。多くの投資家が同社に落胆してもおかしくはないが、なぜか久美子氏が会見を行ったこの日の同社の株価は、ストップ高となった。いったいなぜ“爆上げ”したのか、専門家に聞いた。

 親子バトルは、経営方針の違いから生まれた。職人気質の父・勝久氏はこれまで通り顧客の会員制を維持し、主に富裕層向けに「良い品を」というスタンス。一方の久美子氏は「ニトリ」や「イケア」などの競合他社が安価な組み立て式家具で業績を伸ばしていることに危機感を覚え、同社も庶民向けの販売手法に転換すべきという考えだ。

 両者のビジネスモデルは相反。勝久氏は25日に会見を開き「(後任に)久美子氏を選んだのが間違いだった。悪い子をつくった」と表現し、3月27日の株主総会で自身の社長返り咲きを狙う。

 一方の久美子氏も26日の会見で、昨年7月に勝久氏が一旦社長に復帰してから「半年間で2度も業績の下方修正をしている」とその経営手腕を批判。久美子氏は先月末に社長に再任されている。

「勝久氏には妻と5人の子供がおり、妻と長男は勝久派。次男、次女、三女は久美子派。家族の中でも真っ二つに分かれているんです」(関係者)

 大塚家具は業界ナンバーワンだった上場企業。内輪モメは本来なら決して表に出すべきではない。本紙連載「当たり屋のひらめき」を執筆する株式評論家の北浜流一郎氏も「上場企業としてはあるまじき行為。醜いですね」と一刀両断する。

 だが、この日の同社の株価を見てみると…。なんと午前中に前日比+300円の1405円でストップ高に。出来高は前日の約20倍になった。どういうことなのか?

 北浜氏は「この日の久美子氏の会見に好感を持ったのでしょう。投資家が見ているのは経営者のセンス。中期経営計画で明確に経営刷新を打ち出し、黒字転換予測を立てたことが大きい。彼女に賛同する投資家の意思がそのまま株価に表れたのだろう。もともと同社の財務体質は悪くはないですしね」と解説する。

 会見が始まったのは午後2時と市場が閉まる1時間前だったが、会見するというニュースはそれ以前から流れており、それ自体が好感されたとも考えられる。25日発表の中期計画も買いの材料となった。

 久美子氏は男性人気も高い。一橋大学経済学部を卒業後、富士銀行(現みずほ銀行)を経て大塚家具に入社し、2009年3月に社長に就任。26日で47歳になったが、ネット上では年齢を感じさせない容姿に「奇跡の46歳」という声も聞こえていた。証券マンの話。

「父親同様、感情的な面を持っているが、親の七光ではなく、将来のビジョンを持って経営にあたっていた。独身で、社内では『仕事のしすぎで婚期を逃した』とウワサされるほど」

 とはいえ、闘いは始まったばかり。命運を握る株主総会までに、両者はより多くの株主の支持を得なければならない。

 それはとどのつまり、完全なマネーゲーム。個人で18・04%の株式を保有する勝久氏は、最大株主。プロキシファイト(委任状争奪戦)を宣言しており、大株主の説得工作だけでなく、機関投資家から自社株を高値買い取りすることが考えられる。これが株価のストップ高を誘発した部分もある。

 一方の久美子氏は約10%の株式を握る創業家の資産管理会社の役員を務める。さらに15年12月期の配当を1株40円から80円に上方修正したことで、株主にアピール。北浜氏は「今後の鍵を握るのは昨年末から同社株を大量買いしていた米ファンド会社や、数%の株式を保有する取引先企業、そして何といっても銀行。彼らがどちらにつくか」とみる。

 創業者の父VS才媛社長――。テレビドラマも真っ青な骨肉の争いから目が離せない。