佐藤優氏 岸田首相は批判にひるまず国際協調的外交の推進を

2021年10月05日 15時17分

佐藤優氏
佐藤優氏

【マンデー激論】9月29日に行われた自民党総裁選挙で岸田文雄元外相(衆議院議員)が選出された。10月4日の衆議院本会議と参議院本会議で岸田氏は第100代内閣総理大臣(首相)に指名された後、天皇の認証を受けた。

 岸田新政権の外交について、筆者は次のように見ている。岸田氏も安倍・菅路線を継承し、日米同盟の強化を外交政策の中心に据えるであろう。もっとも岸田氏には、良い意味でも悪い意味でも、イデオロギー色が稀薄である。

 従って、中国との関係についても米国が進めている「民主主義陣営対権威主義陣営」という二分法に基づくイデオロギー色の強い反中政策とは一線を画すると思う。日本と米国では、地政学的情況が異なるので、中国に「権威主義国」というレッテルを貼って、イデオロギー的に国民の反中感情を煽るような政策を取るべきではない。尖閣諸島への中国の公船侵入など日本にとって具体的脅威となる現実は一つ一つ解決していくが、日本にとって利益がある経済関係は続けていくというプラグマティックな外交を展開すべきだ。

 岸田首相は、広島出身でもあり、岸田氏は核廃絶への思いが強い。核兵器の保有や使用などを禁止する「核兵器禁止条約」(核禁条約)が、2021年1月22日、50カ国・地域で発効した。米国、中国、ロシアなどの核保有国は参加していない。日本政府は実効性が乏しいとして、同条約には参加しない方針を明らかにした。他方、国民世論には唯一の被爆国である国民感情を考慮して、核禁条約に日本も参加すべきであるという声もある。

 自民党と連立を組む公明党は、核兵器廃絶に積極的で、核禁条約の会合に日本はオブザーバーとして参加すべきであると主張している。岸田首相が公明党に歩み寄る可能性が十分あると思う。

 さらに敵基地攻撃能力の保有、米国の中距離ミサイルの日本への配備についても、東アジアで軍拡競争を煽ることになる政策に対しては慎重に対処することになる。

 その結果、自民党のタカ派から「岸田首相の外交・安全保障政策は生温い」という批判が出てくる可能性がある。このような批判に怯まずに岸田首相には国際協調的外交を推進して欲しい。そうすることで、核廃絶に熱心な公明党が岸田首相を強く応援することになる。総合的に見れば岸田首相の権力基盤が強化される。

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