【所沢エアコン問題】反対市長は筋金入りの“自然派”

2015年02月18日 07時30分

 小中学校にエアコンを設置するかどうかを問う住民投票が行われた埼玉県所沢市が、全国ニュースになるほど話題になっている。賛成多数に終わった投票結果を受けて16日、エアコン反対派の藤本正人市長(53)は「慎重に対応する」と決断を保留した。とはいえ「自然との共生に、生活をシフトしていく考えは今でも正しいと思う」ときっぱり。実はこの市長、実生活でもエアコン禁止を自らに課しているという筋金入りの“自然派”だった。

 エアコン設置は単純に「暑いから欲しい」というものではない。エアコン導入対象になっていた小中学校28校の近くには航空自衛隊の入間基地があり、防音対策を施して二重窓になっていた。結果、夏場でも窓を閉め切ることになり、室内が暑くなるため一旦はエアコン設置が決まり、予算は国と市で出すことになっていた。ところが、藤本市長が計画取りやめを決めたのだ。

 2012年11月号の市広報紙で市長は「原発を産んだのは、実は便利や快適を追い求めてきた現代に生きる人々の欲求だったのではないか。自分に何ができるのか、本当の幸せとは何か。他者を思い、自己を見つめた“震災・原発事故のとき”の思いを忘れてはいけないのです。今、変わらないでいつ変わる!」と、東日本大震災と原発事故が計画見直しの理由と説明していた。ほかに財政事情もあった。

 15日に行われた住民投票で、エアコン設置に賛成が5万6921票、反対が3万47票。投票率は31・54%。ちなみに、市長が当選した選挙は市長の得票が3万8655票で、投票率は34・68%だった。市長の得票より、エアコン賛成の人の方が多いのだ。

 16日に開いた会見で市長は「慎重に対応する」と言うものの、「震災以降、原発事故を経験した大人たちが持っている使命がある。もっと自然と共生する社会へ。私は原発反対です」と、考え方を変えていない。その上で、任期満了となる今年10月までに方針を明らかにすると表明。渦中の小中学校について、「窓は閉め切っていないと聞いている。私は元教員でクールビズとかなかったので、ネクタイを外したことはほとんどない」と強弁した。

 ずいぶんと暑苦しい市長だが、エアコン反対は徹底している。市役所職員は「市長室や市長応接室のエアコンの通風口はビニールでふさがれています。また、公用車でも夏場はエアコンを使っていないといいます。自宅でもそうしていると本人が語ったこともありました。本当かどうかは確認していませんが…」と明かす。

 市役所のエアコンは部屋ごとではなく建物全体で管理されている。だから、市長は自分が主に出入りする部屋だけふさいだわけだ。今のところ、市役所全体でエアコン禁止令が出るような状況にはなっていない。

 保護者代表の一人、大原隆広さんも会見を開き、「市長の得票よりも多い。誠意ある対応をしてほしい」とエアコン設置を求めた。
 市長は原発事故を受けての節電や財政難を理由にしているが、「考えは人それぞれ。市長の考えを市民に押し付けるのはいかがでしょうか?」と疑問を呈した。

 エアコン設置運動に携わってきた男性は「市長は(小中学校で)窓を開けているというけど、換気で開けているだけで、普段は閉めている。騒音で授業を中断することもある」と反発。さらに、「保護者の中にはこの件をきっかけに、子供を私立の学校に通わせようと考えだす人もいる。所沢では子育てができないと言うんだ」と嘆息する。

 藤本市長は10月に任期切れになる。それまでに方針を決める意向だ。住民投票には約4000万円がかかっている。文科省の調べでは昨年4月1日時点で埼玉県の小中学校のクーラー設置率は38・2%。音を上げるのはどっちが先か。