イスラム国 真の狙いは「第3次世界大戦ボッ発」

2015年02月06日 07時00分

 真の狙いは何なのか――。ヨルダン政府が解放を求めていた同国軍パイロット、ムアーズ・カサスベ中尉が過激派「イスラム国」に1か月も前に殺害されていたことが判明し、衝撃を広げている。本紙昨報通り、焼死という最も残忍なやり方だった。ヨルダン政府はただちに報復としてサジダ・リシャウィ死刑囚らの刑を執行。同国ではイスラム国に対する反発が強まっている。不可解なのは、そうなることを分かった上で、イスラム国が動画を公開した意図だ。国際社会への挑戦状なのか、それとも…。

 カサスベ中尉の殺害動画がネットに流れると、国際社会は一斉にイスラム国を非難した。関係筋によると、カサスベ中尉が殺害されたのは1月3日。事実ならば、日本人で人質になって殺された湯川遥菜さん(42)や後藤健二さん(47)をめぐる一連の交渉は、イスラム国が仕掛けた茶番だったということになる。

 著書「イスラム国の正体」で知られるジャーナリストの黒井文太郎氏は「ヨルダン政府はリシャウィ死刑囚との交換を求めていたが、イスラム国は一度もカサスベ中尉を解放すると言っていない。“処刑”動画も手の込んだ作りだったし、最初から殺害以外の選択肢はなかったのだろう」と話す。

 カサスベ中尉はおりの中に閉じ込められ、生きたまま火だるまにされた。イスラム教で遺体は神に面会するまでの“乗り物”と考えられており、それすらなくなる焼死は最も無慈悲な殺害方法だ。黒井氏は「ヨルダン軍が参加した空爆でイスラム国の子供も焼死した。因果応報と言いたいのだろう。また、動画の最後にはヨルダンの軍幹部の実名や住所が列記されている。これは『おまえらも歯向かったら焼死だぞ』という脅しの意味を持っている」と解説する。

 あまりにも残忍な行為に、ヨルダン国民の怒りはピークに達している。軍事ジャーナリストの神浦元彰氏は「間違いなくヨルダン軍は大規模空爆を行う」と断言。一気にイスラム国を叩くチャンスなのか。ことはそう単純ではない。神浦氏は「空爆は行うが、地上戦はやらないだろう。向こうは自爆テロの集団。被害も大きい」。

 イスラム国壊滅の機運が高まれば高まるほど、同組織の思うツボという見方もある。

「向こうが狙っているのは、第5次中東戦争からの第3次世界大戦だ。それほどシリアという国は不安定で“弾薬庫”と言える。その引き金をイスラム国が引こうとしている」と神浦氏。

 憎しみの連鎖は“大義なき戦争”と言われた2003年のイラク戦争が起点になっている。これによりイラクの旧フセイン政権は崩壊し、一方で同国内の混乱に乗じて反米を唱えるイスラム国の前身組織が誕生した。隣国のシリアでは11年にアラブ各国で活発になった民主化運動「アラブの春」の影響が及び、現在もアサド政権と反政府組織が内戦中。中東地域のパワーバランスが崩れたことで、虐げられる人々が大勢出た。

 現在はイスラム国が“悪”だが、空爆や地上戦が拡大してイスラム国の支配エリアに住む子供や民間人に甚大な犠牲が出た場合どうなるか。イスラム国は声高に「米国のせいで罪のない人が殺された。もとはといえば、おまえらが悪いんだ」とアピールするだろう。

 神浦氏は「あの地域のイスラム教徒には少なからず反米感情がある。そこを刺激された場合、どうなるか分からない。加えてシリアのアサド政権の後ろにはロシアとイランがいる。同じイスラム教徒でもスンニ派とシーア派がある。イスラエルの問題もある。米国の立ち回りひとつで、何が起きてもおかしくない。逆を言えばイスラム国は、もっと米国を引きずり出したいはずだ」と見る。

 一連のイスラム国の蛮行を受けて、米国でも地上部隊投入の議論が深まっているが、オバマ大統領は慎重な姿勢を崩していない。残虐行為で挑発を繰り返すイスラム国に対しては冷静な対応が求められる。