安倍政権の経済政策・アベノミクスの可否が争点となった2014年の衆議院総選挙は、自公が全議席の3分の2を上回る326議席を獲得し圧勝。安定政権を築き上げ、アベノミクスの継続が決まった。事実上の国民によるアベノミクスへの信任だが、一方で多くの国民が物価上昇に賃上げが追い付いていないと悲鳴を上げている。一体、日本経済はどうなるのか? カリスマ株式評論家の山本伸氏が2015年の日本経済を大胆予想する。

 アベノミクス最大の目標は、バブル崩壊以来、日本経済が悩まされ続けているデフレ経済からの脱却だった。2012年末に第2次安倍内閣が発足して以来、日銀の金融緩和策“黒田バズーカ”を筆頭とした金融政策と財政政策で円安へ誘導して株価を引き上げ、デフレからの脱却もほぼゴールにたどり着いたというのが大方の見方だ。

 とはいえ、14年に1万6000円超えから始まった株価は、この1年で思ったほど伸びず、リーマンショック前の水準1万8000円を大きく上回るまではいってない。

 山本氏は「金融政策と財政政策による景気底上げはそろそろ限界。そこで15年は改革による景気回復にシフトする」と指摘。

 その上で改革による具体策の一つとして貸金業法の改正を挙げる。

「すべては米国の経済ルールを受け入れることに等しいTPP合意が大前提だが、年収の3分の1までしかお金を借りられない総量規制は真っ先に撤廃されるはず。借りたい人がお金を借りて使う。それだけで大きな景気刺激策になる。このほかにも官僚や業界団体の利権が絡んで選挙前に手が付けられなかった岩盤規制が、TPPを大義に次々と崩され、規制緩和による経済成長がようやく促進されるはず」

 その結果として、山本氏は15年の株価を「年末までに2万2000~3000円に到達する」と大胆予想した。

 一方、株価より気になる物価上昇。その根源である円安は15年もまだ進むのか?

「円安はまだ進むけど、15年末で140円くらいでしょう。というのも、15年は原発再稼働が相次ぐはずで、結果、これまで原油輸出国に足元を見られて割高だった原油輸入価格が適正価格まで引き下げられる。そうなれば貿易収支や経常収支が改善し、円安を推し進める要因が小さくなるので、14年のような急激な円安進行は止まり、円安主導による物価上昇も落ち着くはず」

 すでにインフレ率の上昇は伸び悩み気味。2度の金融緩和で円安誘導し、インフレ目標2%を掲げている日銀の黒田総裁は頭を抱えているようだが、現状、物価上昇に賃金上昇が追い付いていないため、この辺で一段落するのは安倍政権にとって好都合だろう。

 また、賃金が上がらず、アベノミクスの恩恵は大手企業の社員だけという不満の声が強いが、これには「賃金を上げたら法人税を優遇する」という特例措置を発動し、対処する可能性が高いという。

 山本氏の予想通りなら、15年は株価上昇、急激な円安は一段落して物価の急激な上昇も止まるが、一方で日本経済に暗い影を落としそうな注意事項もある。

「1つは欧州危機の再燃。15年は欧州で大きな選挙がいくつかある。この選挙結果によってはEUの経済に再び混乱をきたし、世界経済に飛び火する可能性がある。もう1つは原油価格の下落。米国はシェール革命によって原油輸入国から原油輸出国に生まれ変わりつつあるが、原油価格の下落が行き過ぎると、産油コストの高いシェールオイルは大ダメージを被り、米国の好景気を失速させかねない。この2つは世界経済を冷え込ませる大きな要因になり得るので、注視する必要がある」

 なんだかんだ言われながらこの2年間で株価を引き上げ、景気回復の熱を生んできたアベノミクス。3年目となる15年はホップ、ステップときて、いよいよジャンプの年になることを祈るばかりだ――。