ウナギの消費が最盛期となる「土用の丑の日」を28日に控え、業界からは、かば焼きの販売苦戦への懸念が強まっている。新型コロナウイルス禍で専門店への客足が鈍い上、東京五輪の無観客開催で観光客需要が見込めなくなったためだ。

 今年は東京での緊急事態宣言の再発令など、飲食店が時短や営業自粛を強いられている。ウナギの専門店は出前を駆使するなど工夫を凝らす一方、家庭向け販売は昨年に続き、堅調に推移するとの見方が出ている。この2年、ニホンウナギの稚魚で、“白いダイヤ”と呼ばれるシラスウナギ漁がやや好調だったからだ。

 水産庁によると、2021年の漁期はシラスウナギの国内採捕が11・3トンと記録的不漁だった19年(3・7トン)から持ち直した。輸入分を合わせると18・3トンを養殖のために池入れした。稚魚の取引価格は20年漁期に比べ8・3%低下し、1キロ当たり132万円だった。

 その一方で、密漁に歯止めがかからず、豊洲市場の水産仲卸業者は「水産庁の調べでは、20年の漁期に国内でとられたシラスウナギのうち36・8%が出所不明なんですよ」と明かす。

 さらに警察関係者は「密漁されたシラスウナギを暴力団が不正に買い取る闇ルートがある。水産庁が採捕を許可する都道府県を通じて、取引の透明化を呼びかけているんですが、流通経路が複雑なために改善されない。密漁による闇売買が暴力団の資金源になっているんです」と指摘する。

 シラスウナギ漁は採捕許可を受けた正規の漁業者が通常、深夜に集魚灯で照らしながら漁を行う。「暗闇なので、誰が正規の漁業者か、密漁者か、区別が付かないために、密漁者が紛れ込んでいるのが現状です」(漁業ライター)

 密漁が暴力団の資金源になることを重く見た水産庁は昨年12月にシラスウナギを「特定水産動植物」に指定。密漁すれば懲役3年以下、3000万円以下の罰金となる。それでも元手が激安で、バカ高く売れるため、密漁および密売は後を絶たないようだ。