いじめ滅ぼす千葉の“奇祭”

2012年08月24日 18時00分

 千葉県横芝光町の広済寺で先ごろ、日本唯一の古典地獄劇(仮面狂言)「鬼来迎(きらいごう)」が行われた。おどろおどろしい地獄絵図を見せるエキセントリックな奇祭だが、1975年に国指定重要無形民俗文化財の指定を受けた。

 

 この「鬼来迎」は鎌倉時代に始まったと伝えられる。横芝光町虫生(むしょう)地区の24戸からなる「鬼来迎保存会」が役者も裏方も務める、完全地域密着型の民俗芸能は毎年8月16日に開催される。その中身は――。

 

 舞台は地獄。亡者が閻魔(えんま)大王の裁きを受け、落ちた地獄で鬼や鬼婆の非道な責め苦を受けるが、最後は観音菩薩によって救われる。世に言う因果応報や衆生救済が描かれている。毎年400~500人が集まり、アマチュアカメラマンや卒論のテーマにする大学生も訪れる。

 

 地獄行きの裁判、さいの河原で鬼にいじめられる子供、釜ゆでの責め苦を受ける亡者など多くの見せ場があるが、観客の目当ては「虫封じ」と呼ばれる行為だ。1歳以下の赤ちゃんを鬼婆に抱っこしてもらうことで、健康な成長が期待できると言い伝えられている。

 

 我が子の無病息災を願う親たちが、今年連れてきた赤ちゃんは11人。恐ろしい形相の鬼婆に抱かれるたびに、ギャーギャーと泣きわめく。

 

 生後6か月の珀人(はくと)くんもそうだ。地元生まれの母親土屋佳美さん(36)は「私には子供が4人いるんですけど、4人とも泣いていた」と笑う。

 

「悪いことをしたら地獄行き。良いことをしたら救われる」。そんな世界観を見ていて、横芝光町の佐藤晴彦町長(55)はひらめいた。

 

「悪事には罰が与えられるという当然のことを分かりやすく知ることができる。それなら全国のいじめっ子を連れてきて、鬼来迎を見せてほしい。こういう文化が日本にあるということをもっと知ってほしい。いじめっ子を横芝光町に招待しますよ」

 

 地獄の存在が脳みそにすりこまれれば、軽々しくいじめなどできなくなるかもしれない。