エボラ出血熱の恐怖実態とパンデミックの可能性

2014年10月25日 08時00分

 エボラ出血熱の世界的感染大流行(パンデミック)が懸念されている。3人の感染が確認された米国では、感染の疑いのあった女性が乗ったクルーズ船がメキシコなどで入港拒否される騒動も起きている。日本でも遅まきながら水際作戦の強化に取り組み始めたが、国内で発症者が出るのは時間の問題ともいわれる。感染流行の最前線を取材したジャーナリストの常岡浩介氏(45)が、エボラ出血熱の目に見えない恐怖とパンデミックの可能性を語った。

「カメラの三脚が一度でも地面に触れたら消毒しないといけないと言われた。ウイルスは空気に弱いといわれているが、地面の中では生き延びている可能性があるとのことだった」と常岡氏は振り返る。

 常岡氏は今月、イスラム国に参加するためシリアへ渡航準備していた北大生(26)の同行取材を予定し、警視庁から家宅捜索を受ける騒動があったが、8月中旬に約1週間、エボラ出血熱が猛威を振るう西アフリカのシエラレオネを現地取材していた。

 常岡氏が訪れたのは、首都フリータウンから東へ200キロ離れたカイラフンの街。エボラ熱発生の中心といわれる同地には国際NPO「国境なき医師団」が医療拠点を構え、常岡氏も同団体の協力を得ていた。

「(病院内は)ハイリスクとローリスクエリアに分かれ、完全防護服のうえに足の裏から両手を消毒し、握手などの肉体的接触はダメ。飛沫感染対策で、回復状況にある患者へのインタビューも2メートル離れて行わないといけなかった」

 取材に入った2日目に国境なき医師団の医師への感染が判明し、施設は立ち入り禁止となった。「完全防護していたスタッフが感染したのを聞いたのはショックだった。防護服の表面に体液が付着し、脱いだ時に感染したのではないかと言われた」。今月、米国で出た2次感染者も隔離された病棟で患者の治療に当たった看護師で、ウイルスの感染力を甘くみていたのが原因だった。

 エボラ出血熱はシエラレオネ、ギニア、リベリアの3か国を中心に広まっている。ウイルスの脅威は最大3週間とみられる潜伏期間だ。厚労省感染症課は「潜伏期間中は血液検査を行っても分からない。ウイルスが検出されるのは発症して、少したってから」と説明する。厚労省は21日、前出の3か国への滞在者に日本到着から21日間、体温や健康状態を1日2回、検疫所に報告するよう義務を課したが、潜伏期間中の入国なら空港で体温を計測するサーモグラフィーの効果はなく、水際での完全ブロックは不可能な状況だ。

 発症者が出た場合、日本国内で爆発的に感染が広まる可能性はあるのか?

 常岡氏は「カイラフンで感染が止まらないのは電気もない未開の地で、水も一つの井戸をみんなで使っているから。亡くなった患者を水で洗い、布で包み直して埋葬する慣習がある。発症者が出ても電話がないから救急車も呼べず、うわさを聞いた国境なき医師団が駆けつけるような状況。リベリアも医療関係者が信頼されておらず、暴動で患者が病院から運び出している。文明が進んだエリアでの感染は広がりにくいでしょう」と指摘する。

 もっとも、それも万全な医療態勢が取られた場合の話だ。発症者が出た際は、国内45の医療機関が治療に当たることになっている。「本当に患者を受け入れる病院がどれほど確保されるか。過去にもHIV感染者がたらい回しされたこともあった。政府は最も離れた西アフリカで起きたという意識で、感染者が増えた場合の態勢ができているとは思えない」(常岡氏)

 初感染者が出た時には、大パニックに陥るのは間違いないようだ。