シュルツ米大統領副報道官は10日、北朝鮮の朝鮮労働党の創建記念日に金正恩第1書記の動静が伝えられなかったことについて「北朝鮮の政権は、地球上で最も不可解なものの一つ」だと述べ、米政権内の当惑をうかがわせた。


 シュルツ氏は、北朝鮮に関して「信頼できる公の情報がほんのわずかしかない」として、正恩氏に関する具体的な情報はないと強調している。


“重病説”が伝えられる正恩氏の動静は1か月以上も途絶えたまま。朝鮮中央通信は先月25日に正恩氏が足を引きずって歩く姿を何度も放送して「不自由な体なのに人民のために指導の道を歩み続ける」とナレーションを読み上げた。


 平壌情勢に詳しい関係者は「正恩氏は去年と一昨年の党創建記念日には、祖父(金日成主席)と父(金正日総書記)の遺体が安置されている宮殿を訪れた。それを考えると北朝鮮が異常事態に突入したとみるのが普通です。海外に派遣している北朝鮮の外交官が帰国したという情報も流れています」と明かす。


 そんな不安定な北朝鮮について、拉致問題の全面解決を目指す安倍内閣は、闘病中の正恩氏に代わって実妹、金与正(キム・ヨジョン)氏が「現在、指導的な役割ではないか」という見方をしている。


 政府関係者は「与正氏は正恩氏が倒れてから、北朝鮮指導部の中でめきめきと頭角を現してきた。彼女は“金ファミリー”の一員です。現在の体制を維持することは彼女なしでは難しい状況。正恩氏の体調が今後もすぐれない場合は、彼女が後継者として出てきます」と指摘した。


 与正氏は1987年か88年ごろに生まれたと伝えられる。正恩氏とは仲がよく、一緒にスイスの私立学校に通っていた。金正日総書記が4人の女性との間にもうけた7人の子供の“末娘”だ。正恩氏はこのまま公の場に姿を現さず、妹に最高権力者の座を渡すことになるのか。