兵庫県は22日、薬物の成分にかかわらず、危険ドラッグなど健康を害する恐れのある薬物の販売店を規制する独自の条例案を県議会に提出した。県によると、成分ではなく販売店を規制する条例は全国初。危険ドラッグ使用者による自動車人身事故が後を絶たず、まず販売店から規制するのは有効だろう。しかし、危険ドラッグの本当の“怖さ”を知れば、ただの好奇心で手を出す人は減るはず。その恐ろしいまでの症例が公表されているのだ。

 条例案によると、県は人体に有害な影響を与える恐れがあると判断した危険ドラッグなどを「危険薬物」に定義し、販売店を知事が「監視店」に指定。監視店が危険ドラッグなどをお香やアロマとして販売する際、包装紙などに販売者や製造者の氏名や住所を明記し、危険性や順守事項を客に説明しなければならないと定めた。客には用途以外の摂取をしないとの誓約書提出を求める。

 インターネットなどを通じて購入する際は、知事への誓約書提出を義務づけた。県は是正や販売停止の命令を出すことができ、従わない店には50万円以下の罰金を科す。危険薬物を摂取した場合は5万円以下の過料とした。

 しかし、「危険ドラッグは違法だ」と法や条例で規制するより、効果的なのはドラッグのリスクを包み隠さずに例示することだろう。その意味で神奈川県警ホームページの啓蒙ウェブサイト「危険ドラッグは『ダメ。ゼッタイ。』」は衝撃的。とんでもない症例が紹介されているのだ。

「3階の自分の部屋から飛び降りて、下半身裸になり付近の塀やフェンスを壊し自分がした大便を食べた」

「親から身体に異物を入れられたと思い、包丁で自分の腹を切り腸を引っ張り出した後、裸で街中を走り回った」

「自室で上半身裸となり、刃渡り20センチのサバイバルナイフを机上に置き、『殺し屋がいる、殺される』と大声で叫んで暴れた」

「駅に行こうとして走ったがいくら走っても駅に着かないと110番通報してきた」

 どれもこれも事実だというから恐ろしい。危険ドラッグに詳しい事情通は「ドラッグを使うと、なぜだか包丁やハサミなどの刃物・凶器を触りたくなったり、車の運転をしたくなったり、外に出て行きたくなることがある。使用者の中には、ドラッグを使う前に刃物をガムテープでグルグル巻きにして“封印”したり、車のキーを隠したりする者がいる」と異常行動の特徴を指摘する。

 そこまで危険性を認識しているなら、使わなければいいではないか――と思うのは素人考えだ。ドラッグ経験者は冷静な判断ができなくなる。
 孤独死した人が住んでいた物件の清掃を手掛ける業者は「危険ドラッグが原因の孤独死もポツポツ増えている」と証言する。

「浴槽に張った水に頭を突っ込んだまま亡くなった男性がいた。部屋にはドラッグがあった。高齢者もよく風呂場で亡くなるが、その場合は体は浴槽に漬かったままのことが多い」

 この男性は、妄想を振り払うために頭を突っ込んだとみられる。
 こうした実例に接すれば、危険ドラッグにはおのずと手が出なくなるのでは…。