<日本人拘束>湯川さん「田母神写真」と「銃」の謎

2014年08月20日 07時00分

湯川さん宅の郵便受けには請求書がいっぱい

 シリア北部アレッポで身柄を拘束された民間軍事会社経営の湯川遥菜さん(42)とみられる人物について、イラクやシリアで活動する過激派「イスラム国」が18日までに、インターネットを通じて犯行声明を出した。声明は湯川さんを「日本人のスパイ」としており、本人の否定発言にも聞く耳はなさそう。過激派が強硬な態度を示す背景には、ネット上に田母神俊雄元航空幕僚長(66)とのツーショット写真が投稿されたほか、銃を所持していたことがあると一部で指摘される。それにしても一般人の湯川さんがいったい、なぜ――。

 湯川さんは今年1月、民間軍事会社「ピーエムシー」(東京都江東区)を設立した。3月ごろにシリアを訪れ、今回は2度目だった。知人らには内戦中のシリアで医療活動など人道支援をしたい考えを伝えていたという。単身でシリア入りしたとみられ、本格的な人道支援の前に現地を見たかったようだ。

 過激派は拘束した湯川さんを尋問し、湯川さんは「半分ジャーナリストで半分医師だ」と話したものの、銃を持っていたことから「なんで銃を持っているんだ」とスパイ疑惑をかけられていた。ちなみにジャーナリストとしてカメラを持参していたかどうかは現時点では不明だ。

 また、過激派関係者はツイッターアカウントを持っており、日本からそのアカウントに対して、「彼は民間軍事会社のCEOだ」と湯川さんの立場を危うくする情報が提供された。同時に、田母神氏とのツーショット写真を航空幕僚長という説明付きで提供したユーザーもいたという。

 写真だけ見せられたら、湯川さんが何か特命を帯びていると過激派が勘違いしてもおかしくはない。田母神事務所は「こちらからお話しすることはない」とノーコメント。田母神氏と親しい衛星放送「チャンネル桜」の水島総氏(65)が本紙の取材に代弁した。

「私どもの『頑張れ日本! 全国行動委員会』の忘年会が昨年末にありました。湯川さんはそこへやって来て、田母神さんと私とそれぞれ写真を撮っていったのです。忘年会だから来ている人は仲間だと思っていたし、写真を頼まれたら断りません。後にも先にもお会いしたのはこれ1回きりで、彼のことはよく知りません。田母神さんも同じでしょう。正直、ネットで写真を見て、驚いています」

 保守系団体の関係者によると、同じ時期に湯川さんはほかのいくつかの団体の会合にも顔を出していたという。

「会社を設立する前の時期だし、営業活動していたのではないか。特に田母神氏とのツーショット写真なら商売に使えると思ったのではないか」(保守系団体関係者)

 田母神氏との写真を湯川さんはブログに掲載。田母神氏サイドが困惑するのも無理はない。

 中東取材の経験がある戦場ジャーナリストは「彼はジャーナリストを名乗ったというけど、ジャーナリストは銃を持ちません。カメラだって重いのに、銃まであったら仕事にならない。戦場で捕まれば必ずスパイ容疑をかけられるのですが、銃を持っているとジャーナリストと説明してもうそだと思われてしまう」と首をかしげる。銃の所持は致命的だった。

 過激派はツイッターを駆使していたが、湯川さんが同行していたとみられる反体制派武装組織「イスラム戦線」もネットを利用している。

「中東の武装組織はフェイスブックやツイッターなどネットに強い。かつて自爆テロをしたときに仲間がその様子を撮影してネットにアップするということがよくありました。自分たちの主張をアピールするためにネットを使うのです。そういう事情もあって武装組織にはコンタクトが取りやすい」(戦場ジャーナリスト)

 ネット上には湯川さんが銃を持った写真もある。「あまりにも軽装でコスプレみたい」(同)と場慣れしているようには見えないという。民間軍事会社は日本では珍しいが、世界にはある。

「戦場での民間施設警備や要人警護が仕事。たまに傭兵もする。軍OBが多い」(同)。過激派も民間軍事会社と知って、警戒感を高めた可能性がある。

 湯川さんの自宅は千葉市内にある。アパートの大家の親族は「1年ほど前に入居し、インターネット関連の仕事をしているとのことでした。平日は部屋にいる様子はなく、生活実態はありませんでした。時々、郵便物を取りに来たくらい」と、戦場を思わせるものはなかったという。

 シリアでは反体制派が過激派との捕虜交換によって湯川さんの解放を目指しているというが…。