きょうだいや家族の世話をする18歳未満の子供「ヤングケアラー」の支援に向けた厚生労働省と文部科学省による初の実態調査で、「世話をしている家族がいる」とした中学生が5・7%(約17人に1人)、高校生が4・1%(約24人に1人)いたことが12日に分かった。

 ヤングケアラーとは、大人が担うような家事や、親の代わりに幼い弟妹の世話をしたり、障害や病気のある家族の介護を日常的に行う18歳未満の子供のこと。アルコールやギャンブルなどの問題を抱えた家族をケアするなど状況は様々だ。

 そうした中、これまでに家族の世話について相談した経験が「ない」と答えた割合は中学、全日制高校などいずれの学種でも全体の5~6割に上り、その理由については「誰かに相談するほどの悩みではない」が最も多く、次いで「相談しても状況が変わるとは思えない」が多かった。

 臨床心理士の溝渕由理氏は「『家のことを外に話すな』という親からの無言のメッセージを感じている子供が多く、相談する子供が少ないのも現状だ」と指摘する。

 実際に、溝渕氏の元へ相談に来たヤングケアラーの子供はごくわずかだったという。

「お母さんが障害を持っていてずっと助けているという子は、自分の人生と周りの子の人生があまりにもかけ離れていることに悩んで、こっそり相談に来ていた。また、お母さんが寝たきりになってしまい、父親から性的暴力を受けて二重に苦しんでいる女の子もいた。被害を打ち明けにくい状況下で問題が深刻化するという悪循環にもなりやすい」(同)

 今回の調査では「障害者への支援が少ないから、家族に負担がかかる」と福祉政策への疑問を呈する声もあった。

 これに溝渕氏は「親は結局、子供に頼ることになってしまうけれど、そういうふうにならなくてもいいように障害や病気を持つ人への支援の在り方を見直すことも重要ではないか」と話す。

 厚労省と文科省は今後、福祉サービスにつなぐ仕組みを整理し、5月に相談窓口拡充などの支援策をまとめる。

 まずは、こういった実態があることを多くの人が知ることが大切ではないだろうか。