15日の終戦記念日を前に安倍内閣の全閣僚を相手取り、憲法違反及び閣議決定無効確認請求訴訟を起こした東京・目黒区議がいる。長年ワイドショーリポーターとして活躍した須藤甚一郎氏(75)だ。

 7月1日に安倍内閣が集団的自衛権行使容認の閣議決定をしたことに対し「戦争の悲惨さ、惨めさを体験し、鮮明に覚えている最後の世代の自分が、戦争を知らず、暴走する総理を止めないといけない」と決意した。

 須藤氏は訴状で、憲法9条が定める戦争の放棄に違反すること、閣議決定は憲法99条にある公務員らの憲法尊重擁護の義務に違反し、三権分立の原則にも違反すると主張。

 須藤氏は昭和20(1945)年3月10日の東京大空襲で、板橋から戦火を逃れて埼玉に縁故疎開した経験を持つ。

「4月に小学校入学する年齢だったが入学できず、8月に敗戦を迎えた。東京で爆弾・焼夷弾から逃げ回った恐怖、食うや食わずで栄養失調になり、子供たちは骸骨標本みたいな体形で雑草まで食べ、ノミ・シラミに体中食われ放題だった。その惨めさは忘れられません!」(須藤氏)

 閣議決定後、全国で反対の声が上がったが、提訴をしたのは須藤氏を含め、まだ数件だけだ。須藤氏が許せないのは「戦争を喜々として語った安倍首相」だけではない。昨年8月の麻生太郎副総理兼財務相(73)の講演での発言でわかった安倍内閣の企てだ。麻生氏は「(ドイツの)ワイマール憲法はある日、ナチス憲法に変わっていた。誰も気がつかないで変わった。あの手口を学んだらどうかね」と発言し、直後に発言を取り消した。

「約1年前から、憲法改正ではなく、国民が気づかない解釈改憲を閣議決定することを着々と準備していたから、麻生さんはポロッとしゃべったと思う。国民をどうダマそうかと企てていたことも許せない」(須藤氏)

 ジャーナリスト歴47年のベテラン区議に、安倍晋三首相(59)が今後どう反論するのか、見ものだ。