菅義偉首相(72)は7日、東京電力福島第1原発で生じている処理水の処分をめぐり、首相官邸で、全国漁業協同組合連合会の岸宏会長と会談し、海洋放出に向けて理解を求めた。

 岸氏は「反対という考えはいささかも変わらない」とした上で、政府側に風評被害対策の充実などを求めている。

 汚染処理水の処分は、福島第1原発の廃炉作業を行う上で問題となっていた。菅首相は「(処分について)近日中に判断します」と断言した。

 安倍政権で汚染処理水の処分は、風評被害の拡大や世論の猛反発を恐れて先送りしていた。

 自民党内では「菅首相が決断すれば、風評被害を万全に期して支える」と声が上がる一方、菅首相と距離を置く自民党議員は「東京五輪・パラリンピック開催前に、海洋放出を決めたら、間違いなく政局になるだろう」と指摘した。

 菅首相は野党が菅内閣に対して不信任決議案を国会へ提出すれば「衆院解散の大義になり得る」との考えを示している。

 立憲民主党の安住淳国対委員長は「先方(菅首相)がそこまで言う以上、我々にも解散に対しての十分な責任があります。解散権を枝野さんや我々が持っていると誤解してしまう」と厳しく批判した。

 ある野党議員は菅首相が汚染処理水処分に舵を切ることにこう怒りを爆発させた。

「野党に不信任決議案を出せと挑発していますよ。新型コロナウイルスの感染拡大、ワクチン接種すら進ませていない中、春先に解散するなどあり得ないと思っていました。国民は政治に不信感を抱きます」

 汚染処理水の処分の〝強行〟は野党を挑発して不信任決議案を提出させる作戦か――菅首相は衆院解散・総選挙を見据えて動いている。