タイ代理出産 日本人父は資産70億円強の御曹司

2014年08月10日 07時30分

 タイ・バンコクのマンションで乳幼児9人が発見され、日本人の父親(24)が代理出産で産ませたとみられる騒動で、この男性が大企業創業者の御曹司で、70億円超の資産を有する実業家と判明した。タイ警察当局は人身売買など犯罪の可能性があるとして捜査を進めているが、一方で「犯罪性は低く、相続・贈与税対策としての新たなスキーム(仕組み)作りの可能性がある」との見方が浮上。庶民とはかけ離れた実態がみえてきた。

 タイの警察当局やメディアによると、父親とみられる日本人男性は香港在住で、見つかった生後1か月~2歳の乳幼児9人のほか、4人の計13人の子供が代理出産で生まれたとして病院に登録されていた。乳幼児9人は市内の高級マンションの3室で育てられ、ベビーシッターが1人ずつ付き、養育費には月20万バーツ(約63万円)がかけられる手厚いものだった。

 セレブなのも当然だった。男性は日本で長者番付上位に入る大企業創業者の御曹司であることが判明した。自社株だけでも70億円相当の資産を所有する大株主。本紙が8日、この会社に事実関係を問い合わせると「弊社の事業活動と関係ないことですので、コメントは差し控える」との答えが返ってきた。

 男性は香港に数年前から居を構え、過去2年間でタイには65回、入国した記録があった。男性を知る現地の関係者は「まじめな青年で、見かけはとても大富豪には見えない。日本のオタクの青年のような風貌ですよ。ただ、高校・大学とも香港でしたから、語学にも、東南アジアの現地事情にも精通している」という。今回の騒動で警察がマンションに踏み込んだ際は、自家用ジェットでマカオに飛んでいた。

 タイ当局は、男性が人身売買をもくろんでいた可能性を疑っているが、男性の莫大な資産が判明し、人身売買でもうけようとしていた可能性は低くなってきた。タイの現行法でも犯罪には当たらないかもしれないのだ。

 男性は子供たちの元へ月1回会いに来ていたといい、大家族志望だったともいわれる。男性の現地代理人弁護士は「経済的に余裕があり、自分が死んだ後に財産を相続できるように代理出産をした」と話している。

 海外を舞台にした大富豪一族の財産相続で思い出されるのは、消費者金融「武富士」の贈与税騒動だ。創業者が所有株を香港に移住した長男に海外法人を経由して贈与したことが判明すると、国は税逃れとして1500億円の贈与税を追徴課税したが、これに裁判所は税対象外と判決を下し、無税となった。

 資産家の節税対策に詳しい事情通は「武富士の創業者一族が使ったスキームはすでに財務省が法改正し、課税できるようになったのですが、現行法にはまだ抜け道がたくさんある。富裕層はいかに税金を払わないかに腐心し、海外へ渡って、永住権取得やタックスヘイブンを経由させるなど、あの手この手で納税回避スキームを探っている」と語る。実際、贈与者が海外に居住し、子や孫の相続人が外国籍や長く海外に在住している日本人の場合は、国内財産のみが課税対象で、国外財産は免除される。財務省は国外財産も課税できるように法改正を進めているが、国の壁とグレーゾーンが多く、いたちごっこが続いているのが現状だ。

 タイのメディアによれば「男性はすでに少なくとも3人の子供を日本に連れ帰り、資産の一部を譲った」ともいう。またタイから出国した乳幼児2人は、男性と同じ名字で日本のパスポートを所持していたという。ただ、一般論でみれば、24歳と若い男性が死後を見据えて相続対策をしているというのは不自然だ。

「自分の死後という意味合いより、父親に当たる大企業オーナーの相続対策に動いていた可能性もある」と前出の事情通。

 さらに、現地関係者は「男性は現地に仕事の拠点を持っており、カンボジアのパスポートも所持しているとの情報もある。生まれた子供たちを、自分の仕事の現地責任者にしようとしているのではないか」との見方もある。