小保方氏宛ての遺書「新しい人生を」の意味深エール

2014年08月09日 09時00分

自殺した笹井氏。背景写真は理化学研究所発生・再生科学総合研究センター

 理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(CDB=神戸市)の笹井芳樹副センター長(享年52)の自殺は、いまなお各方面に波紋を広げている。その死から2日が過ぎた7日、STAP細胞論文の主著者で研究をともにした理研・小保方晴子研究ユニットリーダー(30)の代理人が、同氏宛ての遺書の内容が漏れていることに怒りを示した。理研内部では、笹井氏の命を救えなかったことに批判の声が上がった。

 小保方氏への遺書が、意に反して内容が明かされているとして、代理人である三木秀夫弁護士は、怒りをあらわにこう語った。

「宛先の決まっている文が、そこからではなくてほかから出るのかは、なぜか分からない。ちょっとおかしなことだと思っています」

 小保方氏への遺書は一部メディアで内容の詳細が明かされた。A4サイズの用紙1枚に横書きで約20行がパソコンで作成されていた。「もう限界を超え、精神が疲れはてました」「もう心身とも疲れ、一線を越えてしまいました」と笹井氏は自身の胸中を明かし、小保方氏に向けて「私が先立つのは、私の弱さと甘さのせいです。あなたのせいではありません」「自分をそのことで責めないでください」ともつづったという。

 これまで明らかになった「STAP細胞を再現してください」というエールの後に「それが済んだら新しい人生を一歩ずつ歩みなおしてください。きっと きっと」という意味深な内容に加え、文末に署名まであったとも報じられた。

 この報道に三木氏は激怒し、リーク元を厳しく批判した。

 笹井氏死去の一報を受けた小保方氏は、ろうばいするばかりで、現在も事情をうまくのみ込めないほどの精神状態に陥り、遺書を落ち着いて読める状態ではない。遺書の内容のリークは、小保方氏や周辺人物からではないのは確かだろう。

 小保方氏は現在、三木氏や理研のサポートを受けている。リーク元について、三木氏は「理化学研究所からは漏れていないと思っています」とも語った。

 一方、理研の将来を担う笹井氏の死には、内部批判も上がっている。

 理研は7日、公式ホームページでコメントを発表。「メンタルケアなどに留意していたところですが、今回の事態に至ってしまったことは残念でなりません」とした。さらに「現在、当該論文(STAP細胞論文)著者のみならず、現場の研究者、特に若い研究者たち、技術者、事務職員ならびにその家族、友人たちの動揺と不安は深刻であり、非常に大きな心労を抱えている者もおります。(中略)いましばらくの時間と静寂な環境を与えていただくことを切にお願い申し上げます」とメディアにもクギを刺した。

 だが「笹井氏が深刻なレベルまで病んでいたことを知りながら、何とかできなかったのか」と理研関係者は疑問を投げかける。

 笹井氏はSTAP細胞論文の不正問題発覚後、体調を崩した。3月に1か月間ほど入院。死の10日前にはスタッフとの議論もままならず、誰が見ても“危険”な状態だった。これらは後に竹市雅俊CDBセンター長(70)の口から明かされたが、後の祭り。

 国内最高の研究設備に加え、潤沢な研究費…理研は「科学者の楽園」と称されるが、元理研職員によると「契約は1年更新で、成果が出なければクビを切られる世界。精神的に追い込まれる人は多い。報道されていないだけで、自殺者は過去何人もいる」。

 本紙の取材に理研広報部は「『健康管理室』があり、曜日ごとに精神科の専門医が研究員の心のケアに当たっています」と万全の態勢だったと強調。笹井氏もここで診察を受けていたが、休養や入院を強く勧められることはなかったという。

 笹井氏は3月に副センター長辞任を申し出たが、上層部にうやむやにされ「辞めることもできないのか…」とこぼしていたという。以降、精神安定剤の処方量は増え、会話できないレベルに。危険な“シグナル”は出ていただけに悔やまれる。