スウェーデン衣料品大手H&Mは31日、中国国内の顧客や協力企業の信頼回復に努めるとの声明を出した。同社は新疆ウイグル自治区の人権状況に懸念を示し、新疆綿を使わないと表明してきたが、中国内でボイコットの動きが強まったことを受け火消しに走った形だ。

 H&Mは中国を「非常に重要な市場。繊維産業の目覚ましい発展を目の当たりにしてきた」と評価した。

 中国では、新疆ウイグル自治区での強制労働を懸念して新疆綿を使わないと表明していた欧米系ブランドの不買運動が勢いを増している。

 H&Mは以前から強制労働に懸念を示す声明をホームページに掲載しており、中国のインターネット上では不買を呼び掛ける声が広まった。主要なネット通販サイトはH&Mの商品検索を停止。ここにきてH&Mが“折れた”形だ。

 一方、中国では海外ブランドの排斥運動があると必ず、愛国心や忠誠心をアピールするため、自国産ブランドの積極的な購入が行われる。

 ユーチューブチャンネル「地球ジャーナル ゆあチャン」で情報発信している中国人ジャーナリストの周来友氏はこう語る。

「中国国内のSNSでは、『今こそ国産メーカーの商品を購入しよう』と呼び掛けるネットユーザーのコメントが多く寄せられています。こうした結果、国産メーカーの株価が高騰するなど、愛国バブルとも言える状況も見られているのです」

 しかし、中には愛国心の高まりを利用する中国メーカーが出てきたという。

 周氏は「中国大手スポーツ用品メーカーのスポーツジャケットの価格は騒動前に119元(約2000円)だったのが、騒動後には149元(約2500円)となっていました」と言う。

 海外ブランド不買運動が強まる中、国産ブランドが“便乗値上げ”とは、さすが中国といったところか。周氏は「中国国民の海外ブランドへの厳しい目は今後、自国産ブランドへも向けられていくのかもしれません」と指摘している。