天下のNHKが、女子トイレにまで突撃取材する暴挙に出た。狙われたのは、理化学研究所の発生・再生科学総合研究センター(理研CDB)でSTAP細胞の再現実験に参加している小保方晴子研究ユニットリーダー(30)。23日夜、同局の取材スタッフが小保方氏を長時間追い回し、全治2週間のケガまで負わせていたことが24日に分かった。常軌を逸した取材に小保方氏は激怒し、代理人は訴訟の可能性も示唆。NHKは全面謝罪したが、同氏側にとってこの一件は他のメディアへの“見せしめ”にもなりそうだ。

 小保方氏は24日夕、神戸市内の病院で診察を受け「頸椎捻挫」と「右肘筋挫傷」で全治2週間のケガと診断された。同日朝には、代理人の三木秀夫弁護士への電話で「体中が痛い。何か私が犯罪でもしたのですか」と激怒し、著しい精神的ショックを受けている様子だったという。

 ケガを負わせるほどのNHKの取材とはどんなものだったのか。

「理研から入ってきている情報だと、午後5時半ごろから(NHKの)バイク隊みたいなのが(理研CDB前に)控えていた。8時ごろに理研を出て、追い掛けられることが分かって、1度、ホテルのトイレに入った。そこから出たのが9時ごろ。出たときに『NHKです』と言われ、質問攻めに遭って追い回された」(三木氏)

 小保方氏は午後10時に三木氏に電話しており、計2時間にわたってNHKは追い掛け回したことになる。民放テレビ関係者はあきれた様子で話す。

「通常、取材対象をホテルまで追い掛ける場合でも、対象者やホテル側の許可がない限り、入り口までしかカメラは回さないのがルール。今回のNHKの取材の仕方は常軌を逸していますよ」

 NHK取材班はホテルに逃げ込んだ小保方氏を少なくとも2台のカメラで追い掛け回した。三木氏は「ホテルの中で下りのエスカレーターの上と下から挟まれてカメラを向けられた。そのため、小保方さんはそこから逃げるために逆走して上ったときに、いろんなところに体をぶつけて痛みがあった」と負傷の状況を説明する。

 女子トイレまで入ってきたというから異常だ。

「5人で小保方氏を取材し、1人は女性がいた。なぜかというと、女性トイレに隠れたときに、女性スタッフが入ってきて小保方氏が隠れている状況を外に向かって連絡していた」(同)

 なぜNHKはそこまで取材を強行したのか。関係者によると、27日に放送される「NHKスペシャル」のためだった。同日放送分は「調査報告 STAP細胞 不正の深層」と題し、番組ホームページで「不正の実態が明らかになってきた」と予告。その取材のため22日、三木氏にメールで質問を送ったが、三木氏と小保方氏本人は「同日に若山照彦山梨大教授が発表を修正した内容を含んでいたことや、再現実験に集中するという理由で回答を拒否した」(関係者)。本人のコメントも肉声も取れなかったため切羽詰まり、直撃取材に出たようだ。

 三木氏は即、NHK側に抗議。これを受けて、NHK大阪放送局報道部長、報道部取材統括、取材記者の3人が三木氏の事務所を訪れて深々と頭を下げ、報道部長が「取材方法に行きすぎがあったことを深くおわびする」と謝罪した。今後、抗議文を受けた理研やホテルにも謝罪に出向くという。

 三木氏は当初、NHKの対応次第では刑事告訴や損害賠償請求の検討も示唆していた。NHKは撮影した映像は使用しないともしており、法廷闘争に発展する可能性は低いとみられるが、今後は何らかのペナルティーが科せられることもあり得る。4月には、直撃取材した一部週刊誌が、会見への出入りを禁止されている。

 さらに今回の厳重抗議は、同様の突撃取材が起こらないよう、メディア側への“見せしめ”的な意味合いが込められたものとも解釈できる。

 三木氏はかねて、小保方氏に関連した報道への異議などを自身のフェイスブックに書き込んできた。社名と記者の実名を挙げて「言いがかり的な記事にはあきれます」などと批判したこともあった。

 こうした流れで起こった取材強要による負傷騒動は、小保方氏側にとってはメディア側を批判する材料にもなる。“STAP細胞作製、200回以上成功”を明言している小保方氏は「右手が痛いと実験に支障が出る」と話したというが、“次の1回”に向けて軽傷で済んだのは救いだろう。