理化学研究所には身内からも批判が上がった。人工多能性幹細胞(iPS細胞)による世界初の臨床研究を進める理化学研究所発生・再生科学総合研究センターの高橋政代プロジェクトリーダー(53)がツイッターで、理研が小保方晴子研究ユニットリーダー(30)の検証実験参加と懲戒委員会の審査中断を決めたことに、「理研の倫理観にもう耐えられない」と批判の声を上げたのだ。

 高橋氏は共同通信の取材にも「(倫理的に問題なのは)不正追及を後回しにし、処分が延長されることで事態の収拾が先送りになること。臨床は信用が命だ」とした。そのうえで、2日には「まだ始まっていない患者さんの治療については、中止も含め検討する」ともツイッターに投稿した。

 この発言の波紋は大きかった。高橋氏は、STAP細胞論文の共著者の笹井芳樹・同センター副センター長らと並ぶ理研のエース研究者として知られる。夫は京都大iPS細胞研究所の高橋淳教授。京大の山中伸弥教授がノーベル賞を獲得したiPS細胞の実用化研究に不可欠の人物だ。

 理研は同日、「高橋政代プロジェクトリーダーの個人のツイッター上での発言について、多数お問い合わせを頂いております」として、高橋氏のコメントをホームページに掲載。

 高橋氏は「お騒がせして申しわけありません。現在移植手術中の患者さんの臨床研究については予定通り遂行します。ネット上で『中止も含めて検討』と申し上げたのは、様々な状況を考えて新規の患者さんの組み入れには慎重にならざるを得ないというのが真意で、中止の方向で考えているということではありません。臨床研究そのものには何の問題もありません」と釈明した。

 ネイチャー誌がSTAP細胞論文を撤回。理研への批判が集まり、世界的な注目を集めるiPS細胞の臨床研究にも波紋を広げた格好だ。