佐藤優氏「ロシアが強硬論に転じた」は間違い

2021年03月01日 16時00分

佐藤優氏

【マンデー激論:佐藤優】2月10日にプーチン大統領が「日本との関係は発展させたいが、憲法に反することは行わない」と述べた。

 14日に「ユーチューブ」に投稿された動画で、ロシア外務省のマリア・ザハロワ情報局長は「既にそうすること(クリル諸島の引き渡し)はいかなる場合でもできない。なぜなら憲法でこのテーマに関して、議論することすらできない」と答えた。

 プーチン大統領とザハロワ局長の発言を日本のマスメディアはロシアが北方領土問題に関して強硬論に転じたと解釈している。この解釈は完全に間違っている。

 日本のマスメディアには、ザハロワ局長が語っていない事柄の意味が理解できていない。プーチン大統領やザハロワ局長は、「クリル諸島を日本に引き渡すことはできない」と述べているが、「歯舞群島と色丹島を引き渡すことはできない」とは一言も述べていない。また、1956年の日ソ共同宣言の効力を否定する発言もしていない。

 2018年11月のシンガポール日ロ首脳会談で安倍晋三首相(当時)とロシアのプーチン大統領は「(1956年の)日ソ共同宣言を基礎に平和条約交渉を加速する」ことで合意した。日ソ共同宣言は、両国の国会で批准された法的拘束力を持つ国際約束だ。共同宣言第9項後段で平和条約締結後にソ連が日本に歯舞群島と色丹島を引き渡すことを約束している。

 この約束を履行するためには、今後の平和条約交渉で、クリル諸島の範囲を明確にする国境画定が不可欠だ。2020年に改正された領土割譲禁止を規定するロシア憲法67条第2項でも「隣国とロシア連邦の国境の画定を例外とする」と明記されている。

 日ロ間の国境画定交渉は、ロシア憲法で明示的に認められているのだ。1951年のサンフランシスコ平和条約2条c項で日本は、千島列島(英文ではクリル諸島)を放棄した。この原点に立ち返り、北海道の付属諸島である歯舞群島と色丹島はクリル諸島に含まれないという合意を今後の交渉でロシアと取り付ければ、歯舞群島と色丹島は日本領、国後島と択捉島はロシア領という形で日ロ間の国境線画定ができる。

 プーチン大統領やザハロワ局長の発言でロシアの平和条約交渉に対する方針が変わったかと尋ねると、クレムリン(大統領府)やロシア外務省の関係者は、「いいえ、何も変わっていない(ネット、ニチェボノーボボ」と答える。

「何も変わっていない」というのが、歯舞群島と色丹島の返還を実現するキーワードだ。

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