「やっぱり」「ほら見たことか」だけど「仕方ないんだよな」。これが世のサラリーマンの本音らしい。プロ野球・DeNAの中村紀洋内野手(40)の懲罰抹消の一件を受けて、働く男たちに取材をしてみたところ、ちょっぴり切ない気持ちになっている人がいかに多いことか。「だって、うちの会社も似たようなものだから…」

「中畑さんのリーダーシップもどうかと思うけど、同情もするね。クセのある男でも使わざるを得ない状況っていうのは確実に存在するんだよ」

 こう愚痴るのは中堅企業で営業部長を務めるAさん(53)。今春、上層部に夏までの売り上げアップを厳命されたという。

「消費増税直後の今、成績を上げるのはハッキリ言って厳しいのに、上はいい気なもんだよな。そもそもここ数年、使える接待費も微々たるものだし、あまりに結果を求められるから若手に冒険もさせられない。そりゃ、育つものも育たないよ。結局、頼るところは能力があって“自分の客”を持ってるアイツだったんだ」

 呼んだのは、前の部長にたて突いて他の部に飛ばされていた元エース営業マン(39)。部下の「かき回されるからやめてください」という声もあったが、背に腹は代えられない。この4月から営業に戻した。

「大きい数字ではないけど、すぐに結果は出したよね。でも、そうしたらすぐに次長のやり方を公然と批判するようになってさ。次長には『ガマンしてくれ』と頭を下げたけど、GW前に今度は喫煙所で俺の文句を言いふらすようになっちゃって参ったよ。『今の営業部はダメだ』『部長が俺の言うことを聞けばもっと数字を上げられるのに』って。予想はしていたけど、まだ1か月でしょ? 早すぎるよなあ」

 苦笑いするAさんは「それでも仕方がない。数字数字うるさい会社がいけないんだよ」と力なく話す。一度、元エースと話し合いを持ったというが、相手は生返事を繰り返すだけ。今は、部下たちから「だから言ったじゃないですか!」と酒を飲みながら叱られる始末だという。

 一方、「成績を上げろっていうのはまだいいですよ。こっちはそもそも人が足りないんだから」と話すのはこれまた中堅企業の管理職・Bさん(49)だ。若手がすぐに辞めてしまうため、常に人員不足。仕事を回すには“問題児”を活用せざるを得ない。

「仕事は可もなく不可もなく、特技は二日酔いの47歳。新しいことにチャレンジしようという気はゼロで、若手に『頑張っても給料は同じだぜ』ってささやくんです。とはいえ、あんまり怒って辞められても困るし、見て見ぬフリをするしかないんですよ」

 今回、サラリーマンたちにいろいろ話を聞いてみたところ、似たような話はゴマンと出てきた。

 慢性的な人材不足と経費削減命令、若手を教育できない現状、それでも結果を求められる上司たち…。DeNAの問題が浮き彫りにしたこの図式は取材をすればするほど“よくある話”で、なおかつ「仕事はできるけど癖のある中堅~ベテラン社員」も、どこの会社にもいる。上司たちは本当は彼らを使いたくない。でも、仕方がないのだ。そして何より、上司たちは皆、一様にあきらめているのが印象的だった。

「ビジネス本には、そういった社員をしっかりと教育しないとダメだって書いてあるけど、お前がやってみろ!って感じだよね。面倒なヤツと本気でケンカすると、どうしても疲労するし、精神的にもやられるから、放っておくのが一番なんだよ」(48歳・メーカー)

「トラブルが起きると『ほれ見たことか』って言われるけど、俺だって分かってたっつーの。もうね、この状況に関しては誰が悪いわけじゃない。悪いのは時代だと、俺は悟ったね」(50歳・製造業)

「成績を上げろっていうなら、もっといい人材を採ってほしい。会社とワガママ男と若手に挟まれて、俺たちが潰れちまうよ」(52歳・不動産関係)

 そんな立場を「最近の若手は分かっていないようで分かっている」とは、社員研修を手がける会社の某講師。

「彼らは上に同情はしています。でも、そんな現状を見て奮い立つかと言ったらそうではない。やはり冷めた部分がありますからね」

 実際、若手の声を集めてみると…。

「俺たちをいびったり、部の雰囲気を悪くするような人をどうして使うんでしょうかね。そんなに僕たちが使えないんでしょうか…。なんかブルーになりますよ。ええ、最近は仕事はほどほどに、私生活を充実させてます」(27歳・金融業)

「腐ったミカンと一緒にいるからホントにこっちも腐ってきちゃいました。入社して3年、スキルもモチベーションも上がらずじまい。転職活動するパワーもないですし、僕も将来はあんなふうになるのかもしれませんね」(25歳・通信関係)

 結局、ストレスなく生きているのはマイペースに自我を通し、みんなに面倒がられるような社員だけ。経営者の皆さん、こんな状況をどうにかしてあげてください!