コロナ感染ゴリラを回復に導いた最先端の人工抗体が注目されている。

 米カリフォルニア州のサンディエゴ動物園サファリパークはこのほど、11日に新型コロナ感染が類人猿で初めて確認されていた園内の複数のゴリラのうち、ニシローランドゴリラ(雄、48歳)が、人工抗体治療により回復しつつあると発表した。

 高齢に加え、肺炎と心疾患があったゴリラに投与されたのは、モノクローナル抗体。ウイルスから体を守るタンパク質の抗体を人工的につくったもので、米国ではコロナ治療薬として緊急使用が許可されている。コロナに感染したトランプ前大統領の治療にも使われたことで知られる。

 人工抗体は軽症者の重症化を防ぐことができ、副作用も少ないとされ、米国ではすでに数万人に投与されている。

 最近では米大手製薬会社が「開発中の人工抗体治療薬の治験で、コロナの発症リスクを下げる効果が確認された」と発表し、ワクチンと同様に発症予防にも期待が寄せられている。

 米国に続き、24日にはEUで初めてドイツが人工抗体の使用を開始すると発表したが、驚くのはその価格だ。ドイツ政府は「20万回分を4億ユーロ(約500億円)で購入した」としたが、これは1回分=25万円という計算だ。

「ファイザー製のワクチンが1回あたり約2000円(2回接種が必要)なのと比べると、人工抗体薬はまだ高すぎる。でも、今後使用する国が広がって、副作用などのリスクが少ないと立証されて、各国で使用認可が下りれば、大量生産され価格も安くなるはず」(医療関係者)

 日本では北里大学、名古屋大学に次いで島根大学、長崎大学が人工抗体の作製を発表しているが、まだ国内使用の承認はされていない。