ゴールデンウイーク終盤、こどもの日の5日午前5時18分ごろ、東京を都心で震度5弱(千代田区)の地震が襲い、ギョッ!として思わず飛び起きた人も多かっただろう。幸い子供たちをガッカリさせるほどの影響はなかったが、実は前日に、関東の空をはじめ鳥取、京都、大阪など西日本でも異常現象が目撃されていた。今年は深海魚が頻繁に打ち上げられるなど、不思議なことが頻発しているが、これらを「宏観異常現象」と呼ぶ。今回の空の異常は、地震の前兆だったのか、それとも今後さらなる大地震が起こるのか。

 宏観異常現象とは、地震雲とされる雲、目に見える太陽や月の異常、深海魚の大量浮上、クジラの大量座礁、ネズミの大量死、井戸水の水温上昇、地鳴り、携帯電話のひどい雑音やデータ通信の遮断など、地震の前兆とされる現象のことだ。

 そのうち太陽の異常などが4日午後、関東から西日本にわたって広い範囲で観測された。空を眺めることが仕事のUFO研究家、竹本良氏が異常現象を目撃し撮影した。

 竹本氏は「品川で釣りをしている時に、上空にアーク(円弧)の虹が出現したんです。“環水平アーク”という気象現象のようですが、太陽の同心円ではなく、逆向きのアークでした。4日午後4時ごろのことで、それから1時間後には太陽の右側に縦状態の光現象が現れたんです。その12時間後に地震が発生。前兆現象だったのでしょうか」と語る。

 この虹色の光が空高く横一直線に浮かぶなどする「環水平アーク」と呼ばれる現象は、関東地方から中四国地方の広い範囲で観察され、各地の気象台にも問い合わせが相次いだ。

 新緑と残雪が輝く、鳥取県の国立公園・大山(1729メートル)の尾根筋には正午前に現れ、数分間で姿を消した。中腹にある旅館街では、大勢の観光客らが「山の上に虹が出ている」と、珍しそうに見上げていた。

 鳥取地方気象台によると、太陽の光が雲に含まれた氷の粒で屈折して色づき、平らな虹のように現れる。珍しい現象だが、春先の薄曇りの日に見えることがあるという。

 京都市内では午後0時10分ごろ、南西の空に5分間くらい現れた。大阪管区気象台にも正午すぎに問い合わせの電話が入り、午後1時半ごろに職員が撮影。日本気象協会は午後0時48分に東京上空を撮影した写真をホームページに掲載した。

 日本の広範囲でこの現象が目撃された翌日の5日午前5時18分ごろ、東京都千代田区で震度5弱の地震が観測された。栃木、群馬、埼玉、千葉、東京、神奈川各都県で震度4を記録、東北から関西、中国地方の広範囲で揺れを観測した。

 気象庁によると、震源地は伊豆大島近海で、震源の深さは約162キロ。地震の規模はマグニチュード(M)6・0と推定される。東京23区で震度5弱以上の観測は東日本大震災が起きた2011年3月11日以来だった。

 太陽周辺の光の異常現象だけでなく、今年は深海魚が浅い海中に浮上し、続々と漁師の網に掛かったり、浜辺に打ち上げられたりしている。これも宏観異常現象の一つで、普段見ることのない深海魚がたびたびニュースで取り上げられた。これら深海魚の異常行動も、深い海の底あたりで、何らかの異変が起こっていることを表しており、地震の発生が危惧される。

 政府の地震調査委員会は先月末、相模湾から延びる相模トラフ沿いで今後30年に起きる地震の発生確率を、マグニチュード(M)7程度(M6・7~7・3)は70%程度、M8級(M7・9~8・6)でほぼ0~5%とする長期評価を発表した。相模トラフ沿いは、首都圏に大きな被害をもたらすとされる首都直下地震の主な震源域となる。関東大震災も相模トラフ沿いの地震だ。

 今後、宏観異常現象に常に気を配り、いざというときの心の準備をしておくべきだろう。