昨今、ギクシャクしている日中関係だが、元警視庁通訳捜査官で、外国人犯罪対策のプロである坂東忠信氏(年齢非公表)によると、民間レベルでの反日感情は年代に差こそあれ、さほど強くないという。

「普段から日本人に憎しみを持っている中国人は少ないと思います。中にはゴリゴリの反日もいますが、日本人が思っているほどではないですね」
 中国人犯罪者が歴史認識問題を持ち出す時もあるが、往々にして自身の犯罪を正当化するためのようだ。

「たとえば『昔、オレたちは日本にやられたんだから、次はオレたちがやってもいい番だ』と罪悪感を解消したり、犯罪の口実に使っている場合ですね。取り調べ中に論争を挑んでくるのも、言い訳に利用しようとしているんです」

 中でもよく出してくるのが南京大虐殺らしい。

「『お前ら、1937年に南京で何をしたんだ!』と。毎回、毎回言われるので“1937年”を覚えてしまいましたよ(笑い)。彼らはあまり本を読む習慣がないので、学校とテレビで植え付けられた『日本鬼子』しか知らない。もっとも、中国共産党を信用してはいないが、党の言うことは最大限都合のいいように利用するんです」

 中国は抗日ドラマが頻繁に放映されていることで知られる。ほとんどが歪曲した内容と演出なので、とんでもない誤解をしている中国人もいるという。

「ある中国人女性は『日本人は人を殺すとき、埋めるんでしょ』と言うんです。南京虐殺の記録動画などで中国人を生き埋めにする日本人がかなり印象深かったようで、驚いた記憶があります」

 中国が歴史認識問題を政治利用するのも、対日戦略上、メリットが大きいからにほかならない。そういう意味では取り調べのように、下手に彼らのペースに乗らないことだ。

☆ばんどう・ただのぶ=宮城県出身。警視庁警察官として18年間勤務し、その半分を北京語通訳捜査官や刑事として中国人犯罪の捜査に従事。対峙した中国人犯罪者は延べ1400人。退職後は作家として執筆講演活動を展開し、テレビ・ラジオなどにも出演。日本の危機と中国の脅威、中国人犯罪の実態を訴える。主な著書に「新・通訳捜査官」(経済界新書)などがある。