韓国船沈没事故の背景か「社会に根付く職業倫理の欠如」

2014年04月25日 20時00分

 韓国・珍島沖の旅客船セウォル号沈没事故で23日、事故対策本部は死者は計159人、安否不明者は143人となったことを明らかにした。事故対応では船長が真っ先に逃げたことが批判されているが、韓国紙「東亜日報」は「もっとひどいのは機関長。船長の指示なしで、部下6人に脱出を命令」と報じた。機関長と部下6人は事故発生直後、乗客が知らない乗組員専用の階段で甲板へ上がり、脱出していたというのだ。

 合同捜査本部はイ・ジュンソク船長(68)らを逮捕済みで、同紙によると、23日にさらに3等航海士の女(25)を含む3人の船員を逮捕した。船長、航海士、機関士など船の運航に直接携わる「船舶職」の15人は全員、脱出し救助された。そのうち11人が逮捕されたことになる。捜査本部は残り4人も逮捕する方針だという。

 捜査本部は同日、船長をはじめ、航海士や機関士など操船を担当する全船員が「団体で操舵(そうだ)室や機関室に集まり、乗客より先に脱出した」と述べ、全員に遺棄致死罪が成立するとの判断を明らかにした。

 乗務員を含め船員は約30人いたが、ほとんどが救助されている。遺体で発見された船内売店の店員パク・ジヨンさん(22)については、複数のメディアが「学生の脱出を助け、数が足りない救命胴衣を学生に譲り、20人の学生を助け、自らは亡くなった。清海鎮(チョンヘジン)海運(運航会社)の花だ」とたたえている。

 一方で、乗客と偽って救助された船長ら乗務員の職業倫理の欠如が大問題になっている。韓国事情通はこう語る。

「そもそも韓国社会では職業倫理というものが希薄。長年の儒教的身分制度の影響で、額に汗して働くことを恥じるという精神文化のせいでもあります」

 それを顕著に表すエピソードがある。前出の事情通の知人が、ソウルで日本語講師として働いていた時のことだ。知人の住むマンションで急病人が発生し、間もなく救急車が来た。

「なんと到着した救護員は、救急車をマンションの入り口に停め、まず車内でたばこを一服した。その後でゆっくりと腰を上げ作業にかかったそうですが、一分一秒を争う病人だったかもしれないのに…と知人はあきれ顔でした」(事情通)

 もちろん、全員がこうではないだろうが、一部でもこういう人がいるとは驚きに値する。

「韓国では『労働』はあっても『職務』という概念はあまり根付いていないということでしょう。どこか今回の転覆事故における人災に通じるものを感じます」と事情通は厳しい目を向けている。

 また捜査当局は、乗組員だけでなく、清海鎮海運と、その事実上のオーナーが利益を優先して安全管理を二の次にした経営をしていた疑いがあるとして、捜査や税務調査を本格化させた。

 一部の現地メディアによると清海鎮海運を所有する兪炳彦(ユ・ビョンオン)氏が経営するセモグループは、1997年に約2000億ウオン(約197億円)の負債を抱え、経営が行き詰まっていたという。

 兪氏一族は現在、約2400億ウオン台の資産を保有しているものの横領や脱税、贈賄などの疑いがあると当局はみており、23日に自宅などを家宅捜索した。

 セウォル号は、改造により重心が上がったため、積載貨物を減らすよう求められたが、事故当時は指定量の3倍以上の貨物を載せていた疑いもある。

 船の乗組員だけでなく経営者側にも怪しいところがあったようだ。