本紙既報の市民後見業界における不正が、北海道で見つかった。あまりに広すぎる上、高齢化が深刻な北海道で「どさんこ後見ネット」というサイトが“リニューアル”オープンした。しかし、同サイトは先日、北海道議会少子・高齢社会対策特別委員会で、鈴木宗男新党大地代表(66)の愛弟子である同党の山崎泉道議(40=帯広市)が「利用が過去1年、全くなかった」と指摘するまで、1年も作成が放置されていたのだ。成年後見制度をめぐるちぐはぐさがまた明らかになった。

 成年後見制度は、認知症、知的障害などの理由で判断能力の不十分な人に代わって、後見人が不動産や預貯金などの財産を管理したりする制度。家庭裁判所が成年後見人を選任する。厚生労働省は「成年後見制度の諸課題に対応するためには、専門職後見人以外の市民後見人を中心とした支援体制を構築する必要がある」としている。

 どさんこ後見ネットの当初の目的は、北海道内の市民後見人の交流および自治体ごとの後見施策一覧を掲載すること。広大な北海道には有用なツールとなるはずだった。北海道庁から「北海道市民後見推進コンソーシアム」が制作を受託。コンソーシアムの代表者は東京大学だ。サイト制作を含む事業全体の委託額は2013年度が約1400万円。

 ところが、昨年サイトを立ち上げたはずなのに、1年たっても全く利用されていなかった。

 道議からの指摘に、道の條野昌和福祉局長は「周知が不十分であったことが原因。事務局の東大と協議する」と答弁した。道議の指摘後、本紙がサイトを確認すると、周知どころか中身の制作そのものがほとんどなされていなかった。サイトの説明となる「どさんこ後見ネットとは」の項目の「運営事務局・お問い合わせ先」は実際は東大なのに「…」で、「交流スペース」も「只今準備中」。道議が指摘した翌週末、「『どさんこ後見ネット』を開設しました」とサイトがオープン。しかし、22日、会員ページにログインしたところ、交流ページなどの中身はほとんど制作されておらず、最終更新日は昨年6月。会員以外でもアクセスできる“表紙”だけが作られたわけだ。

「もともとサイトは会員制なので大切なのは“中身”ですが、肝心な中身が依然できていません。議会対応用に表だけ少しきれいにしたように見せるなど、たちが悪い」(後見事情通)

 また、東大関係者は「同サイトの担当者は東大の特任専門職員A氏。故郷北海道のためにサイト制作に尽力するかと思いきや、作業をしなかった。年末にサイト制作会社から督促を再び受けても無視した」と明かす。

 昨年5月14日付で、東大総長名で北海道知事に提出した12年度の委託業務実績報告書によると、同サイト制作の役務費は89万2500円。「同報告書から、A氏が絡む不適切な旅費支出が4件、市民後見事業と無関係な事務用品の支払いが34万6500円分あったことも確認された。同サイトの不作為とあわせ、事業全体の1割を超す公金がA氏1人によって消費された可能性が高い」(同関係者)

 A氏は4月上旬、サイト制作会社関係者に対し「ゴールデンウイーク明けの議会説明だけ乗り越えれば何とかなる。3万円で作業して、5月末に同サイトを削除してほしい」と電話したという。その言葉通り、急きょ、“開設”したわけだろう。今後、北海道と東大コンプライアンス担当のメスが入ることは避けられない。