佐藤優氏「米バイデン政権で国際情勢さらに混迷」

2021年01月05日 07時00分

佐藤優氏

 米国の大統領が共和党のトランプ氏から民主党のバイデン氏に変わることによって、国際情勢は一層、混迷すると思う。

 トランプ氏は、感情的な言葉を吐き、出鱈目な外交政策をしているように見えたが、結果から判断すると、なかなかよくやった。

 北朝鮮との関係についても、3回の金正恩・朝鮮労働党委員長との首脳会談を行い、戦争を避けることができた。民主党の(ヒラリー)クリントン氏が大統領になっていたならば、核兵器と長距離弾道ミサイルの開発を止めさせるために北朝鮮を空爆したであろう。

 日本は、朝鮮国連軍協定によって、朝鮮半島で戦争が起きた場合、米軍を中心に構成される国連軍に嘉手納、普天間、ホワイトビーチ、佐世保、横須賀、座間、横田の7基地を提供することを約束している。

 当然、北朝鮮はこれらの基地に対し、ミサイル攻撃を行う。朝鮮半島で戦争が起きると日本も100%巻き込まれる。日本が巻き込まれる戦争を防いだトランプ氏の業績を筆者は高く評価する。

 北朝鮮は、核兵器を保有し続け、短距離と中距離の弾道ミサイルの開発を続けている。日本政府は、これに対する有効な措置を取った。

 去年12月18日の閣議決定で、政府はスタンド・オフ・ミサイルを保有することにした。このミサイルの到達距離は900キロメートルを超える。北朝鮮全域が、日本のスタンド・オフ・ミサイルの射程圏内に入る。

 この措置によって、日本の抑止力は高まった。敵基地攻撃能力というような周辺諸国に警戒感を抱かせるような言葉を用いるよりも(そもそも仮想敵国を持たないというのが日本外交の基本なので、敵基地という言葉自体が日本の安全保障政策には馴染まない)、スタンド・オフ・ミサイルを保有することで、実質的に抑止力を強化するという賢明な選択を菅政権は行った。

 コロナ禍でグローバリゼーションに歯止めがかかり、各国のナショナリズムが強まる。米国、中国、ロシアだけでなく、トルコも自国の国益を極大化するために、露骨な帝国主義政策を展開している。

 弱肉強食の国際社会で生き残るために、日本も国家機能を強化しなくてはならない。

 国内の政争に費やすエネルギーをほどほどにして、対外的に日本人の団結を強めることが強く求められている。

☆さとう・まさる=1960年東京生まれ。85年、同志社大学大学院神学研究科を修了し、外務省に入省。ソ連崩壊を挟む88年から95年まで在モスクワ日本大使館勤務後、本省国際情報局分析第一課で主任分析官として活躍した。2002年5月、背任容疑などで逮捕され、09年6月に執行猶予付き有罪判決が確定した。20年の「第68回 菊池寛賞」を受賞した。最新著書は手嶋龍一氏との共著「菅政権と米中危機『大中華圏』と『日米豪印同盟』のはざまで」(中公新書ラクレ)がある。

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