米刑務所に10年服役 元ヤクザが悩める子供を救う

2014年04月24日 16時00分

子供を助けるために立ち上がったKEI氏

 引きこもりや家庭内暴力など様々な問題を抱えた子供のための組織「ホーミー・マリン・クラブ」(神奈川県平塚市)が今月、発足した。運営するKEI氏(52)は元暴力団員で米国の刑務所に10年も服役。そこでメキシコ系米国人「チカーノ」によるギャングの一員に迎えられたという、異色の経歴の持ち主だ。KEI氏はなぜ子供たちのために立ち上がったのか?

 

 KEI氏の人生は、波瀾万丈という表現では生ぬるく感じるほど激動続きだった。少年時代にヤクザになり、覚醒剤をサイパンで売りさばいてリッチになった。だがFBI(米連邦捜査局)のおとり捜査にはまり逮捕。その模様は日本のニュースでも流れた。18か月にも及ぶ拘置の末に懲役10年の判決が下され、2001年に出所するまで複数の米国の刑務所で服役した。そんな半生は「アメリカ極悪刑務所を生き抜いた日本人」(東京キララ社発行)などの本になり、世界的テレビ局も5年にわたって密着取材をしているという。


 KEI氏によれば、米国の刑務所は自由もある半面、人種ごとに有名なギャング・マフィアが群雄割拠し、危険と隣り合わせだという。抗争や薬物の過剰使用で「一つの刑務所で1か月に15人ほどが死ぬと言われています」。KEI氏も刺されたり、全身の骨を折られたこともある。周りに日本人など誰もおらず、孤立無援の中、チカーノのギャングのボスに認められ、仲間に迎え入れられた。


 その一方、刑務所では勉強に目覚めた。「ペアレンティング」という家族に関するカウンセリング等のプログラムを1年で修了。さらに1年半かけてドラッグ依存症のカウンセリングのカリキュラムも修了した。


 出所して日本に強制送還となったKEI氏はヤクザ社会とはすっぱりと縁を切った。そんな中、旧知の警察官から言われたひと言で、子供たちのために立ち上がることを決意した。


「『お前はこれまで散々社会に迷惑を掛けてきた。これからは少しでも社会に役立つことをしろ』と言われたのです。その刑事さんには、刑務所にいる間にグレてしまった私の子供を救ってもらいました。そこで刑務所で勉強した経験を生かして、困っている親や子供たちのために何かやろうと思ったのです」


 KEI氏はチカーノ・ファッションの店を経営する傍ら、その売り上げをつぎ込んで問題を抱えた子供をボランティアで預かったり、親の相談を受けたりしていた。そして「ホーミー・マリン・クラブ」を発足させ、その規模を拡大していくという。無料という方針は貫くつもりだ。


 KEI氏の経歴から、一見すると非常にスパルタかと思われるが、「まったくそんなことはないですよ。子供たちの口から自発的に何らかの不満が出るのを待っている。無理に言わせると、子供たちはうそをつくようになりますから。それでは意味がない」。


 基本的に海で一緒に遊んだりして、固く閉ざされた子供たちの心をほぐしていくという方針だという。


 最近も親の虐待が報じられるなど、いつの時代も不幸な子供たちは存在し、そのたびに家庭のあり方や子供たちの問題が議論を呼んできた。KEI氏の取り組みはそこに一石を投じることになりそうだ。