ドロドロ劇が加速!! 新型万能細胞「STAP細胞」論文をめぐり“黒幕”とも言われた理化学研究所発生・再生科学総合研究センターの笹井芳樹副センター長(52)が16日、都内で記者会見した。笹井氏は「論文撤回が適切」とする一方、共著者の若山照彦・山梨大教授(47)に責任を押し付けるような発言も。主著者で不正を認定された理研の小保方晴子研究ユニットリーダー(30)も同様に若山氏の責任を強調しており、奇妙な“合体”もみせている。だが笹井氏は小保方氏を巧みに突き放しており、「リケジョの星」のはしごも外した格好となった。

「論文に関して、大変多くの混乱と疑義を招く事態になったことを心よりおわび申し上げます」

 300人以上集まった報道陣を前に笹井氏は頭を下げたが、その後の言葉には、保身への思いが満ちていた。

 問題視されている「ネイチャー」誌論文について、もともとは小保方氏と若山氏が中心に書いていたとし、その論文が一度、掲載を却下されたことで、笹井氏が手伝いで参加することになったという。その役割は論文の書き直しであり、不正認定された画像等については「関与してない」と話した。

 ほとんどの実験は小保方氏が、若山氏が理研在籍時に主宰した「若山研究室」にいたころに行われており、笹井氏は実験データをチェックする立場にはなかったという主張だ。会見では「世界の若山氏が間違えるわけがない」と表現し、自分には直接的な責任はないとした。

 また、ずさんと指摘された小保方氏の実験ノートについても「若山氏のチェックを受けている。それを飛び越え私が小保方氏に『ノートを持ってきなさい』というのはある程度の必然性がないとできない」と若山氏の責任とした。

 若山責任論を唱える点では小保方氏も同じだ。14日に小保方弁護団が発表した「補充説明」にはSTAP幹細胞の疑惑についての説明があった。若山氏が特定のマウスでのSTAP細胞作製を小保方氏に依頼したら、別の系統のマウス由来のSTAP細胞が返ってきたという経緯だ。

 小保方氏は「STAP幹細胞はSTAP細胞を長期培養した後に得られるもの。長期培養を行ったのも保存を行ったのも若山先生ですので、その間に何が起こったかは、私には分かりません」と知らんぷりのような説明をしている。

 若山氏に責任をなすりつける点で小保方氏と笹井氏は一致。さらに、週刊誌報道への対応でも共闘するという。

 一部週刊誌は2人の不適切な個人的関係を報じたが、両者とも「そういうことはありません」。理研関係者は「法的手段を含め、対応は考えることになる。笹井氏と小保方氏から意見を聞くこともある」と共同訴訟の可能性も示唆した。

 これまで若山氏は、小保方氏の恩人とされていた。東日本大震災の影響で、小保方氏がハーバード大学に戻れなくなった際に手を差し伸べたのが若山氏だった。その若山氏に対し、小保方氏は冷たい。16日に「尊敬する笹井先生が、私の過ちのために会見で厳しい質問にお答えになっている姿を見て、本当に申し訳なさ過ぎて言葉に出来ません」とコメントを発表したのとは対照的だ。

 この騒動は小保方氏と笹井氏のキーパーソン2人によって起こされたものと理解されていたが、ここにきて若山氏を頂点とする三角関係となった形。「理研で研究を続けたい」という小保方氏と、理研幹部である笹井氏にとって、理研を離れた若山氏は“スケープゴート”にうってつけだったとも思える。

 ただ、笹井発言には小保方氏への厳しい見方も随所にちりばめられている。

 STAP細胞の存在を前提としないと考えにくいデータがあるとした一方、「科学は宗教ではない」とも語り「最も有力な仮説」にとどめた。会見で「STAP細胞はあります」と断じた小保方氏とは距離を置くニュアンスだ。小保方氏への評価についても「未熟な研究者」とした理研・野依良治理事長(75)と同じように「トレーニングが足りなかった」との見方を示した。

 1月末の論文発表時、STAP細胞をアピールする報道向け資料の作成に携わった笹井氏。責任も強調しつつ、わが身を守る。あるテレビ番組でも言及されたが、小保方氏ははしごを外されたとも言える。