新型万能細胞「STAP細胞」の論文不正問題をめぐって14日、主著者の小保方晴子研究ユニットリーダー(30)が代理人を通じて発表した文書に、同氏の不正を認定した理化学研究所が困惑している。文書は9日の会見で話した内容の補充説明。STAP細胞の「200回作製」「第三者も作製に成功」といった主張を繰り返しているが、理研側としては“説明済み”の話だという。

 文書は14日午前、報道各社にファクスで送信された。9日の会見で物議を醸したのは、第三者がSTAP細胞の作製に成功していたという発言。文書でも「成功した人の存在は、理研も認識しておられるはずです」と強調した。

 確かに理研は認識している。理研関係者は「ネイチャー論文を作製した後に、『Oct4』の発現まで確認した人物が1人います。また、論文作製時に若山研の研究員が再現性を確認したと聞いています」と話す。

 論文は1月末、英科学誌ネイチャーで発表された。「Oct4」とは、STAP細胞のような多能性を持つ細胞にみられる特異なタンパク質を言う。「若山研」は、論文共著者の若山照彦山梨大教授が理研在籍時代に仕事をした研究室で、小保方氏はユニットリーダーになる以前に所属していた。若山氏は現在、論文の撤回を主張している。

 小保方氏が今回指摘した「理研の認識」は、同氏のカン違いである可能性が高い。STAP細胞をめぐる騒動でキーワードの一つとなっているのが、Oct4の発現(発光)。発光が確認できると、STAP細胞論文の初期のステップが終了したことになる。しかし、前出の理研関係者は困惑げに続ける。

「Oct4の発現だけでは、部分的な確認にしかならず、STAP細胞ができたとは言えません。若山研のことも、どこまでの話か理研では把握していません。これらのことはすでに会見で話していることなんですが」

 3月にあった論文不正の調査に関する理研の中間報告で、川合真紀理事が「第三者が成功したとは聞いている」と発言。ただ、発光現象の段階までであり、STAP細胞が作製できたというわけではないことは会見で確認済みのこと。1か月前に終わった話を蒸し返すあたり、小保方氏の焦りがうかがえる。

 200回の作製についても、実験は毎日のように行い、1日に複数回のこともあったと説明。STAP細胞の研究は5年ほど前に始め、2011年9月ごろまでに100回以上作製したという。

 とはいえ、小保方氏と理研の間で主要な争点となっているのは論文の画像における「捏造(ねつぞう)」と「改ざん」および「悪意」の有無。STAP細胞の存在については理研が棚上げした状態で、今回のアピールが理研の再調査の判断に好影響を与えるかどうかは分からない。

 文書には若山氏に責任をなすり付けるかのような表現も。若山氏が特定のマウス系統を使ってSTAP細胞を作ることを小保方氏に依頼したら、別の系統のマウスで作製されたものを渡されていた一件についてだ。

 これはSTAP幹細胞の解析で分かったとされたことだが、「現在あるSTAP幹細胞は、すべて若山先生が樹立されたものです。(中略)どうしてか、私の作為的な行為によるもののように報道されていることは残念でなりません」と、“私は知らない”と訴えた。

 理研はSTAP細胞の作製に成功した第三者2人の氏名について、「報道が集中するので控えさせていただきます」としている。小保方氏も「迷惑がかかってはいけないので、私の判断だけで、公表することはできません」。不正認定をめぐって隔たりが鮮明な両者だが、ここだけは同じ意見。

 会見に続く“反撃”第2弾を行った格好の小保方氏は今後、出席者限定の説明会を開く意向も示した。