
バッシングの空気が変わった。STAP細胞論文をめぐって理化学研究所に不正認定された小保方晴子研究ユニットリーダー(30)に擁護が相次いでいる。日本中がかたずをのんで見守った9日の小保方氏による“涙の会見”後、厳しい論調の多いネット上で擁護論が増え始めた。5日付本紙1面で、風が変わることを予知していたかのように「大人力では理研より小保方氏が上」と判定した“小保方ウオッチャー”石原壮一郎氏(51)は、今回の会見のハイライトに、意外なシーンを挙げ「すごい大人力だ!!」と改めて絶賛した。
「こうして表に出てきたことがすばらしい。勇気をたたえたい。取り乱したり興奮したりすることも予想されましたが、とても冷静に説明していた。小保方さんに有利になる決定的なものは何も出てきませんでしたが、会見をしたことで我々が怒る理由もなくなってしまいました。会見前に『清水の舞台から飛び降りる気持ち』と話したそうですが、そのまま3回転半のジャンプを決めて見事に着地に成功しましたよ」
石原氏はこう評価する。ハイライトシーンはハンカチで目頭を押さえた場面ではなく、意外なポイントを指摘した。それは記者から「小保方氏以外にもSTAP細胞の作製に成功した人はいるのか」と聞かれた場面だという。
メディアやネットでも「名前を言えば有利になるのに」「言えないのはあやしい」と議論の的になっていたシーンだ。
「『名前を出せば証拠になる』と記者から追及されたことで、小保方さんが窮地に陥ったように見えました。自分が助かりたいなら名前も言えたでしょう。しかし、言ってしまえばその人に迷惑がかかり、(仲間を売ったと嫌われ)研究者の道が閉ざされてしまうかもしれない。追及に対し『そうですね』と肯定もせず、かと言って『それはちょっと…』と否定もせず、『なるほど』と中間でにごしたのは、高い大人力のなせる技です」
会見によって擁護に回った著名人も現れた。教育評論家の尾木直樹氏(67)は「立派」とほめた。あれほど辛らつだったネットでも擁護論が増え始めた。
「2時間半もいじめられながらも気丈に振る舞った。理研を追い詰めもしなかった。これ以上、責めるのはヤボです。細かく会見内容をみていけば疑問はあるでしょうが、大まかな印象としてはもういいんじゃないか。バッシングの逆風が暖かい春風に変わる瞬間を目撃できたのはよかった」と石原氏。
ブランドの指輪をして“リケジョの星”ともてはやされるなど、当初から若い女性を前面に出してきた。だからこそ男性よりも女性からの視線の方が厳しかったのも事実だ。
「今になっても女性が『小保方さんってなんか嫌なのよね』と言っていたら、株を下げます。例えば、会見前は合コンで男が小保方さんを擁護しようものなら、女性陣から『あんなのがいいの』と突っ込まれたでしょう。今は逆で、小保方さんを擁護する女性はいいコで、『あの手の女はうそついてるのよ』というコがいたら、『お前がそうなんだろ!』となりますよ(笑い)。これからは合コンで小保方さんの話題を出しましょう」。まるでリトマス紙のようだ。
今回の会見が一定の成果を収めたのは疑いがないが、こんなにあっさりと小保方氏の言い分を受け入れてもいいものなのか。だまされているんじゃないのか。ゴーストライター騒動の佐村河内守氏(50)と何が違うのか。
「女の子だからと言ったら身もふたもないですが、目をキョロキョロして質問してる記者を探したりと、一生懸命さがあった。理研を責めないで踏みとどまったのもいい。佐村河内さんは面白かっただけです」
肝心のSTAP細胞について石原氏は「あればあるでいいけど、どうでもよくなりましたね」。小保方氏は「STAP細胞は真実」と話していたが、そこは伝わらなかったようだ。