新型万能細胞「STAP細胞」論文をめぐって今日9日に会見する理化学研究所の小保方晴子研究ユニットリーダー(30)の騒動で、もう1人のキーマンとみられている人物が雲隠れしている。小保方氏の上司であり、論文の共著者でもある理研発生・再生科学総合研究センターの笹井芳樹副センター長(51)だ。週刊誌などでは小保方氏との個人的な関係が報じられたが、張本人の小保方氏が会見することで、今後は公の場に出てこざるを得ない。

 笹井氏が、論文の執筆過程を詳細に知り得る立場にあったのは間違いない。理研関係者は「笹井氏も会見する意向を持っています。やるとしたら、東京でやると調整を進めています。ただ、体調が万全ではないので、いつになるかは分かりません」と話す。

 笹井氏と同じく体調不良の小保方氏は9日、記者会見に臨む。8日には理研に対して不服申し立てをし、受理された。9日には入院している病院から会見場に向かうとみられる。

 論文問題では、上司である笹井氏の責任も小保方氏に劣らない。1月末のSTAP細胞公表時には、喜色満面で記者会見に登場。その際、報道陣向けにiPS細胞と比較した資料を配布。STAP細胞の方が作製が簡単などと書かれており、iPS細胞でノーベル賞を受賞した山中伸弥京都大教授(51)の反論を招いた。のちに理研は比較資料を撤回した。科学ジャーナリストは「あの資料はとんでもないミスだった」と笹井氏批判を強めている。

 論文に数々の疑問点が浮上してくると、笹井氏は公の場から姿を消した。

 1日に行われた理研の調査委員会の最終報告についても笹井氏は「共著者の1人として心よりおわび申し上げます」と書面でコメント。「文章を書き上げる面で他の共著者に教授・助言をする役割を主に担っており」と論文における自身の役割を説明し「若手研究者の過誤の予防のための指導を徹底できなかった点も大変悔やまれます」としたが、あくまで自分は不正を知らなかったという見解だ。

 小保方氏の会見では、笹井氏とのやりとりが詳細に明かされるとみられている。どのような経緯で論文投稿に至ったか、不正と指摘された点をどこまで笹井氏が把握していたか、かっぽう着などメディアを意識した広報戦術に笹井氏がどれだけ関与したかなどが明らかにされるはずだ。

 小保方氏の意向に対する説明も笹井氏には求められる。「笹井氏は研究不正をしたとは認められていませんから、不服申し立ての権限はありません。何のための会見かというと、本人の口から説明がしたいということになります」(前出の関係者)。論文についてだけでなく、小保方氏の会見で出てきた内容についての見解を示す会見になりそうだ。

 しかし、肝心な問題があるという。「東京で会見をやりたいのですが、果たして本人が神戸から移動できるかどうかが問題です。笹井氏も体調不良。といっても精神的に参っているだけなんですが、移動直前に『やっぱり無理』となるかもしれない」(同)

 上京のための新幹線に乗れない、なんとも情けない状況になっているという。すでにSTAP細胞騒動を受けて、笹井氏の昇進話がつぶれたとも指摘されている。小保方氏の暴露内容によっては、体調不良がより悪化しかねない状況だが、笹井氏には上司、共著者としての責任を果たさなければならないのも確かだ。