“ミスター捕鯨”嘆き節「政府の対応が甘かった」

2014年04月04日 09時30分

 日本が南極海で行っている調査捕鯨が、国際捕鯨取締条約に違反しているとした国際司法裁判所(ICJ)の判決を受けて、安倍晋三首相(59)は2日「非常に残念。しかしながら判決に従う」と述べた。水産庁も同日、2014年度の実施が困難だとの見方を明らかにし、事実上断念した。日本の完全敗北に等しい結末。世界的な捕鯨のスペシャリストは本紙に、調査捕鯨について日本政府の「対応が甘かった」と指摘した。

 元国際捕鯨委員会(IWC)日本代表代理で、捕鯨問題の第一人者“ミスター捕鯨”として知られる「国際東アジア研究センター」客員主席研究員の小松正之氏(60)は「大変に厳しく、商業捕鯨モラトリアム(一時停止)を支持した不適切な内容を含む判決だ」と語る。

 判決で指摘された趣旨は「調査捕鯨を計画通りにやっていない。調査になっていない」「調査捕鯨と言いつつ、実際は在庫調整の商業捕鯨だ」の2点。小松氏は「日本は甘かった」と嘆く。

 まず、捕獲頭数の未達成が問題だ。ザトウクジラとナガスクジラの捕獲目標は50頭だったが、現実には“政治的意図”から、ほぼ0頭とした。ミンククジラも調査1年目に850頭、2年目は505頭。3年目以降は100~200頭程度しか捕っていない。

「科学調査なのに在庫調整をした。ちゃんと捕っていれば、データから分析もできるし抗弁もできた。調査捕鯨は調査が主目的で、結果として副産物を売るという商業性を持つ。主目的を達してないなら、残るのは商業性だけ。だから商業捕鯨だと言われた」

 この論理は誰の目にも明白だ。「素人でも簡単に追及できるような非科学的なマズいやり方をしてきた」

 2年目からクジラ肉余りに対して在庫調整に入った。この“弱点”を突かれることが分かっていたのに、日本政府は必要な対応をしてこなかった。

 16人の判事のうち10人が反捕鯨国出身者だった影響も大きいだろう。そうはいっても、日本ができることもたくさんあったのは事実。

「南氷洋にミンククジラはウジャウジャいる。たくさんいるミンククジラを捕ってはダメという『国際捕鯨取締条約付表10条e項(商業捕鯨のモラトリアム条項)』を維持してきたこと自体がこの条約に反するのに、日本は廃止と無効の議論を展開しなかった」

 1982年のモラトリアムにより商業捕鯨は禁止となり、90年にIWC科学委員会が行った調査では、南極海のミンククジラは捕獲数を守れば捕っていいレベルだったのに、モラトリアムの取り下げがなされなかった。

 それでも、日本はまだ挽回できるという。

「訴訟対象になったのはJARPAII(第2期南極海鯨類捕獲調査)。判決は『そのJARPAIIをやめなさい』というもの。調査捕鯨全体をやめる必要はない、という判決」だからだ。

 今後、日本が立ち上がるには「情熱」が大切だ。「こんなに叩かれている負け試合でも、精神的に立ち直る強さを持てるのか、だ。権利を正当に行使するか、だ」。日本の官僚に対して、「今まで情熱をもって期待できる成果を出してこなかった。期待できる材料が欲しい」と小松氏は言う。

 そして、忘れてならないのは捕鯨中止で大問題が起こることだ。

「増えすぎたクジラは魚をたくさん食べる。資源枯渇の原因は乱獲とクジラだ。クジラが食べる水産資源は年間約2億5000万トン。世界の漁業生産量は1億8000万トン。そのうち養殖を除いた天然資源が8000万トン。クジラは人間の3倍食べるんだ」

 クジラのために、魚が消えるかもしれないという危機感を持たなければならない。