国への不信感は募るばかりだ。「森友学園」の国有地売却問題を担当していた元財務省近畿財務局職員・赤木俊夫さん(54=当時)が、決裁文書改ざんを強制され自殺したとして、妻の雅子さん(49)が国と佐川宣寿元理財局長(63)に、計約1億1000万円の損害賠償を求めた訴訟の進行協議が9日、大阪地裁で行われた。

 原告側は、俊夫さんが改ざんの過程を記録したとされる“赤木ファイル”などの提出を国に命令するよう、地裁に申し立てたことを明かした。

 雅子さんと会見を開いた生越照幸弁護士は「国側は従前の主張を繰り返すだけで『争点と関係ないから、(ファイルが)あるかないかも言えない』との回答でした」と明かし、「俊夫さんが受けたストレス、恐怖感を立証するためには“赤木ファイル”等を含めた、ここに出ていない文書が必要。この訴訟の核心的証拠になりうる」と説明した。

 国側は雅子さんに対し、俊夫さんを公務災害と認定した理由をまとめた報告書を7日付で開示したが、生越弁護士は「改ざんの『か』の字もない」とバッサリ。雅子さんは「夫は間違いなく改ざんをしたことを苦にして鬱になった。“赤木ファイル”というのを残して検察に提出したことで、自分が犯罪を犯したことを取り調べられるのを苦にして亡くなったのは間違いない。そのことが一切載っていない。夫は改ざんしてしまったけど、財務省や財務局は夫の死についてもウソを書いていると思います」と改めて国側に真実を明かすよう求めた。

 安倍晋三前首相の「桜を見る会」前夜祭をめぐる問題が再び追及されている中、赤木さんの死をめぐっては、国側はのらりくらりとした対応を繰り返すばかり。

 雅子さんは「裁判は時間がかかるとは聞いていたけど、ここまでノロノロするとは想像しなかった。体力勝負と思います。夫の亡くなった原因と経緯が、いつになったら分かるんだろうという不安もありますが、落ち着いて前に進もうと思います」と気丈に話した。