「米・中・露」コロナワクチン覇権争いの行方

2020年12月03日 11時00分

ファイザーが開発しているワクチン(ロイター)

 英政府が2日、米製薬大手ファイザーとドイツのビオンテック社が共同開発した新型コロナウイルス感染症のワクチンを承認したと発表した。欧米メーカーの承認は日米欧では初。今後は各国で大規模な接種が始まる見通しだが、世界的なワクチン覇権争いが激化するのは必至。特に来年1月に大統領が交代する米国、ウイルス発生源・中国、安価ワクチンを強調するロシアの動きが注目されている。

 英国のハンコック保健相は来週前半に接種を始める方向だと明らかにした。英政府は来年末までに計4000万回分(2000万人分)を確保する契約を締結済み。英紙によると、このうち最大で1000万回分を今年中に調達する見通しだ。

 感染者が世界最多の米国はファイザーから既に使用許可申請を受けており、FDA(米食品医薬品局)の専門家委員会が12月10日に開催されて承認されれば、今月11日にも接種が可能になる見通し。

 米政府当局者は「まず米国内で640万回分を配布する」としている。高齢者施設の入所者や医療従事者などを優先し接種を開始し、年内に4000万回分を供給する方針だ。

 英国に続き、EUでも規制当局が年内に承認する可能性がある。

 英オックスフォード大と英製薬大手アストラゼネカは先月下旬「開発中の新型コロナ対策のワクチンで70%の有効性を示した」と発表。年内にも英当局に使用許可を申請するとしている。

 米英に負けていないのが新型コロナ発生源となった中国だ。中国医薬集団有限公司(シノファーム)は先月下旬、開発したワクチンの市場への供給許可を当局に申請した。

 同社はすでに7月から「100万人近くに緊急投与したが、深刻な副作用の報告はなく、わずかに軽度の症状がみられたのみ」としている。許可が下りれば、年内にもワクチンを発売する意向だ。

 ユーチューブチャンネル「地球ジャーナル ゆあチャン」で情報発信している中国人ジャーナリストの周来友氏はこう語る。

「中国医薬集団は中国国営企業で、世界に先駆けて、今年6月から中東のアラブ首長国連邦(UAE)やエジプト、バーレーン、南米のアルゼンチンやペルーなど10か国以上で臨床試験を行っていた。これまで約300億円以上を投入してきた」

 1回の接種で500元(約8000円)の料金になるとみられている。

 各国がワクチン開発に躍起になるのはコロナ禍収束だけでなく、主導権争いの思惑もある。

「ワクチン開発においても、米中のどちらがイニシアチブを握るのかによって、世界の秩序バランスにも大きな影響を与えることになる」(周氏)

 くしくも米次期大統領となるバイデン氏は中国寄りともいわれる。習近平国家主席からすれば、邪魔者だったトランプ氏がいなくなる上に、巨大経済圏構想「一帯一路」のパートナー国に優先的にワクチンを供給し、影響力を強めれば“世界制覇”に一歩近づけるだけに熱も入る。

 このほか、ロシア政府は、ガマレヤ記念国立疫学・微生物学研究センターが開発したワクチンを今年8月に世界でいち早く認可。世界初認可を強調したが、世界保健機関(WHO)などは「わずか2か月弱の臨床試験で認可されており、安全性については厳格な審査が必要」との見解を示している。

「ロシアは自国製ワクチンについて1回の接種費用が10ドル(約1040円)以下で供給できると強調している。米ファイザー製は15・5ユーロ(約1960円)になりそうなのに比べ、世界で最も安価という点を売りにアピールしている」(海外メディア関係者)

 ちなみに日本はファイザー社と6000万人分の供給で基本合意しており、厚労省で認可が下りれば、来年1月にも接種が始められる予定だ。

 どの国が主導権を握るのか、世界経済にも影響を与えそうだ。

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