菅首相の「マスク会食」お願いに込められた〝忖度の要求〟

2020年11月20日 11時00分

コロナ対策を最優先課題としている菅首相

 新型コロナウイルスの新規感染者数が過去最多を更新する中、菅義偉首相(71)は19日、飲食を通じた感染リスクが指摘されているとして、食事中も会話の際にはマスクを着用する“マスク会食”を実践するよう国民に呼びかけた。一口食べて、マスクして会話して、一口食べて…。もしくは無言で食事を全部食べてから、マスクをして会話…。声が大きくならないようにアルコールは飲まない。そんな会食ってあり? 専門家は国民の“大人力”が求められていると指摘した。

 国内の新型コロナウイルス感染者は19日、新たに2385人が確認され、過去最多を更新した。東京都は534人、大阪府は338人、北海道は266人、愛知県は219人など8都道府県で最多となり、特に都市部での増加が顕著となっている。東京都では感染状況に関する4段階の警戒度を最高レベルの「感染が拡大している」へ約2か月ぶりに1段階引き上げた。
 小池百合子都知事は19日の記者会見で「年末年始を迎えるとますます会食が多くなると思うが、改めて会食時の対策を徹底していただきたい」とし、「小人数、小1時間、小声、小皿、小まめ、5つの小(こ)を強く意識してほしい」と呼びかけた。

「大人数の会食はどうしても大声になるので飛沫も多くなる。今後の会食は小人数で開催していただきたい。また、長時間に及ぶ飲食では注意力が停滞し、お酒が回ってきて大きな声になりやすい。そのため、できれば小1時間程度といったようにあらかじめ終了時間を決めておくなど気を付けていただきたい」と強調した。

 またこの日、マスク会食を呼びかけた菅首相は「私も今日から徹底したい」と宣言。公明党の山口那津男代表と官邸で昼食を共にし、早々と実践してみせた。

 マスク会食が報じられると、ネットユーザーも敏感に反応。早速、SNSや検索のトレンド上位にランクインした。

「めんどくさいなんて言わず、みんなで頑張りましょうよ」との声もある一方で、「マスクまでして食事するくらいなら食べに行かない」「飲みながらおしゃべりするから楽しいわけで」などと批判的な声が圧倒的だ。

 実際のところ、マスク会食の効果はどうなのか。医療ガバナンス研究所理事長で内科医の上昌広氏はこう指摘する。

「家族や職場の人とご飯を食べに行く時に、そこだけマスクを着脱してももう知れてますし(効果は)ほぼ皆無だと思う。食事の際にもマスクすることにどれだけ効果があるのか、極めて疑問。私はそんなの誤差範囲だから、意味ないと思う。今は無症状の感染者がうつすので感染者がいなければ絶対かからないし、感染者がいた場合、マスク着脱したくらいで大丈夫かどうかは疑問に思う」

 それにしても、感染者が増える中、「GoToイート」などを続行する政府がやっと呼びかけた対策がマスク会食とは…失望の声も少なくない。

 今回の政府の対応について「大人力検定」の生みの親でコラムニストの石原壮一郎氏は「『やっと出てきたのがこれか』という恥ずかしさというか、菅首相は自分で言ってて恥ずかしくないんだろうかと感じました。安倍晋三前首相がアベノマスクで『これは当てにならない』と全国民に知らしめる形になりましたが、菅首相はその部分も引き継いでいる」とあきれ果てた。

 石原氏は菅首相の呼びかけの裏に、安倍前首相から続く“忖度の要求”が込められているとみる。

「首相の本音は『GoToキャンペーン』をやっている立場上、会食をやめなさいとは言えないけど、本当は『マスクをして会食するくらいなら行くな』と言いたいんでしょう。そこを読み取れ、と。僕たちは官僚じゃないので、忖度する義務も義理もないんですけどね。政府の無策への怒りを忘年会や外出を我慢するといった、感染リスクを低くするエネルギーにいかに変換していくか。大人の踏ん張り力が問われていますね」と語った。

 感染防止に関しては、政府に多くを期待するのではなく、自衛するしかない。

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