終電の繰り上げを決めた鉄道会社が相次ぐ中、西武鉄道も9日、来春から山口線と多摩川線を除く全線で終電時刻を20~30分ほど繰り上げると発表した。始発時刻は繰り下げない。他社の終電との接続に支障がないよう配慮し、需要を見ながら終電前の臨時列車運行を検討する。詳細は来年1月に発表する。

 西武鉄道は理由として、新型コロナウイルスの影響で夜間の乗客が減ったことや、線路などの保守作業時間の確保を挙げている。

 今年の初めには、押し寄せるインバウンドの夜間消費を促すため、国土交通省主導で大阪メトロ御堂筋線の終電を延長する実験も行われたが、コロナ禍により状況は一変。テレワークの普及や飲食店での夜の食事機会が激減したため、深夜の鉄道利用者も減っていた。

 終電が早まることで、飲食店からは「ただでさえ客が減って大変なのに、終電を気にして早く帰ってしまう」と不満の声も聞こえる一方、終電に乗り損ねた人のタクシーやホテルの利用も考えられ、業態によって影響は異なりそうだ。

 実はコロナ禍以前から、終電を早めることを検討していた鉄道会社も多かったという。

「インバウンドの利用もあって、ここ数年の鉄道利用者数は増加傾向にありました。でも、日本の少子高齢化や働き方改革、ライフスタイルの変化で若者の飲酒離れがいわれているのを考えると、遅かれ早かれ、深夜だけでなく利用者全体が減っていくとの危機感はどの社も持っていたと思います。保守の人員不足も懸念されていた。いずれ手を打つつもりが、コロナで一気に露呈した」(鉄道関係者)

 終電時刻繰り上げはJR東日本と西日本が予定しており、小田急電鉄や京阪電鉄など私鉄各社にもその動きが広まっている。
 アフターコロナの社会で“ニューノーマル”が求められる中、今後も終電を早める流れは続きそうだ。