米国の大統領選の一方で、この国の大統領は次々と“罪人”に――。韓国大統領として在職中にサムスン電子などから巨額の賄賂を受け取った収賄罪などで懲役17年の実刑判決が確定した李明博(イ・ミョンバク)元大統領(78)が2日、ソウル東部拘置所に収監された。韓国ではなぜこうも大統領職を終えると、罪に問われる例が相次ぐのか。

 韓国最高裁は先月29日、李被告に対し、サムスンからの89億ウオン(約8億2400万円)を含め、総額で約94億ウオンの収賄と約252億ウオンの横領を認定し、懲役17年と罰金130億ウオン、追徴金約58億ウオンの支払いを命じる判決を言い渡した。

 韓国では、2013年に李被告の後任大統領になった朴槿恵(パク・クネ)前大統領(68)も収賄罪などで起訴され、別の公職選挙法違反事件で実刑判決が確定し、拘束されている。

 李、朴両保守政権の流れをくむ保守勢力は、2人の疑獄事件による打撃から抜け出せず、リベラルの文在寅(ムン・ジェイン)大統領(67)の現政権で、南北関係の停滞や有力者のセクハラ行為発覚などが続いても、世論の支持を味方につけられていない。韓国事情に詳しい文筆人の但馬オサム氏はこう語る。

「12月で79歳の李元大統領は、おそらく生きてシャバの空気を吸うこともないでしょう。朴槿恵前大統領も収監中です。それ以前の全斗煥元大統領も盧泰愚元大統領も特赦を受けて刑務所からは出てきていますが、刑法上の罪人には変わりありません。つまり、韓国は元大統領4人が罪人という異常事態です」

 韓国では任期を終えた大統領が、新しい政権によって在任中の悪事(主に収賄)が暴かれ、刑務所に収監されるというのは、すでに黄金パターンになった感すらある。

 但馬氏は「中華文明から引き継いだ易姓革命の名残とも言えます。王朝が交代するのは、前王朝の皇帝に徳がなくなり、その徳が新しい王朝の皇帝に移ったからだとする考え方です。その際、新しい王朝の皇帝は前王朝を全否定し、皇帝一族と側近をことごとく抹殺しなければいけません」と言う。

 李氏朝鮮が1392年に王朝を打ち立てた時、真っ先にやったのは高麗王朝の撲滅だった。抹殺したのは王家だけではない。李氏朝鮮は儒教を国教にしていたため、高麗時代の仏教寺院や仏像を焼き尽くすという暴挙に出た。陶磁器の高麗青磁は技術者を含めて命脈を絶たれ、新たに李朝白磁の時代が始まった。高麗青磁が高価なのは、そんな理由もあるわけだ。

 これと同じことが現代でも行われているのだ。

「新しい大統領が決まると、前大統領の政治的抹殺が行われるわけです。日韓合意を平気でほごにできるのも、それが否定すべき前政権が決めた合意だから。こういう国とはいかなる合意や条約を結ぶことも無意味と言えます。彼らが日韓併合時代を全否定し、総督府と日本を絶対悪とした歴史を生徒に教え込むのも同じ理屈。併合時代を抹殺することが、大韓民国という政体の正当性だからです」と但馬氏。

 そうなると、現在の文大統領も任期を終えてしまったら…。

 但馬氏は「文大統領も、その異常な従北政策の裏側には何かあるはずですし、政権が代わった暁には、刑務所送りになる可能性は十分にあるはずです。そうなれば、存命する大統領経験者5人が罪人という、世界の歴史にも類例のない事態が見られることになるでしょう」と指摘している。