最終盤に突入した東京都知事選(9日投開票)で、大方の予想とは違い元航空幕僚長の田母神俊雄氏(65)の支持が伸びている。1月上旬に出馬表明した際は泡沫候補との声が多かった。しかし、フタを開けてみれば主要4候補の1人となっている。

 永田町関係者は「田母神氏がどれだけ票を取るか注目しています。脱原発の勢力が分裂してしまったことで、2番手になったら衝撃ですよ」と話す。それほど田母神氏の健闘が意外感を持たれているわけだ。

 中国メディアが「我が国を敵視する田母神氏は公然と中国脅威論を喧伝する人物」と警戒するように田母神氏には“右”のイメージが先行している。確かに田母神氏が会長を務める団体がデモを行えば、日の丸を持った人たちが集結する。近寄り難いと感じる人も多く、だからこそ泡沫候補扱いをされたわけだ。

 選対関係者は「選挙ではより広く支持を得る必要があります。だから街頭演説で国旗を掲げている人がいたら、近づいて『下げてもらえますか』とお願いしたこともあります。大抵、了解してもらえます」と明かす。

 田母神氏自身は教育現場での国旗尊重を訴えている。とはいえ、街頭演説で日の丸がたくさんあると、引いてしまう人もいる。それを考慮しての戦略だった。

 陣営は保守層だけでなく「一般の人」にも浸透していると強調する。

「事務所には100~120人の方がボランティアに来てくれています。明らかに“右”の人はいないですよ。本当に普通の人たちが集まっているんです」(前出関係者)

 また、別の選対関係者が「街頭では福祉や子育てについて話す時間を多くしたい」と話したように、演説内容も保守一色ではない。泡沫を抜け出たのは、戦略が功を奏したからだった。