世界を驚がくさせた49メートルのダイオウイカの写真はニセモノだった。先週「カリフォルニア州サンタモニカの海岸にダイオウイカの死骸が打ち上げられた」というニュースが米サイトで報じられ、オカルトマニア、UMA(未確認生物)ファンの間で話題になったが、これが合成写真でねつ造されたものと判明。ネット上では過去にもスフィンクス写真、神の手が現れた雲などの偽写真がアップされており、専門家からは「“出オチのオカルト”がブームになっている」と指摘している。

 サイト記事では「イカは日本の福島近辺で生まれ、米国にまで漂ってきた。原発事故の影響の犠牲者だ」というショッキングな内容だった。ちょっと見ただけで、合成画像だと分かるが、中国の複数のニュースサイトはこの画像をニュースとして報じた。

 真相は昨年10月、スペインの海岸に打ち上げられた9メートルのダイオウイカの写真を合成したものだった。

 オカルトに詳しい作家の山口敏太郎氏は「この巨大イカのインチキ写真騒動は、現在のオカルトシーンを象徴的に表している。ネット時代においてオカルトが“出オチ”化している。びっくり写真の最初のインパクトのみで勝負するオカルト時代に突入したと言える。言い換えれば、ツイッターやフェイスブックのいいネタになる衝撃的なオカルト写真が珍重される風潮になった」と指摘する。

 ネット辞書によると「出オチ」とは、出だしでいきなり笑いを取る一発ネタを意味する。

 ビックリ写真を現実に撮影することは難しいが、今や画像加工ソフトで、いくらでも写真を加工できるようになった。

「それゆえにインパクトのある写真が世界の片隅で誰かに作られ、ウェブで世界中に流通するわけだ。もはや、奥行きのある“設定の細かいオカルト”は不要となり、“見た目勝負、出オチのオカルト”が必要となっているのです」と山口氏。

 他にもこのような“出オチ”画像は存在する。数年前、チェーンメールで「神の手」という画像が出回った。雲が偶然に神の手のように見える不思議な画像で、7人にメールを回すと幸せになれるというものだった。待ち受け画面にすると、幸せになれるともされ、日本中に広まった。

「結論から言うとこの写真は合成であり、このような雲は一切目撃されていない。もともとは白人のおっさんがケツの穴を広げている写真だったようだ」(山口氏)

 また、昨年12月「雪景色のスフィンクス」という画像が話題になった。世界的ソーシャルニュースサイトが「エジプトに雪。数十年ぶり」という記事を配信した。しかし、これもフェイク画像というか、意外な誤報だった。山口氏は「よく見るとピラミッドとの位置関係がおかしいうえ、補修工事中の足場も設置されている。実はこの写真、日本の東武ワールドスクウェアの25分の1のミニチュアモデルを撮影したものだった」と説明した。