山梨県北杜市小淵沢町で5日、住人がイノシシに襲われた。市道を歩いていた女性(72)と男性(67)が腕と足をかまれた。女性は右腕の骨を折る重傷で男性も足を負傷した。女性を助けようとした通りがかりの男性(33)も軽傷を負った。

 イノシシは体長約1メートルで、3人を襲って逃げ、警察と地元猟友会が捜索にあたっている。農作物を食い散らかす害獣のイメージが強いイノシシだが、今回のように人間の生命を脅かすどう猛な一面も持つ。経験豊富な猟師は「熊より恐ろしい場合もある」と話す。

 熊が人間を襲う場合は四つ足で近寄ってから、一度立ち上がり、そして前足でぶん殴ってくるという。「冷静な人であれば、一撃をかわすこともできる」(猟師)。だが、イノシシはそうもいかない。「猪突猛進」という熟語があるように、人間に向かって体当たりしてくる。体当たり攻撃のほかに、鋭い牙やかみつき攻撃がある。そのアゴの威力はすさまじい。

「硬い革靴を履いていても、かまれると足が血まみれになってしまう」(猟師)

 対策としては、イノシシの弱点を突くことがベストだ。イノシシは唐辛子の香りを嫌う。農作物を荒らすイノシシを撃退するため、唐辛子を燃やして追い払う試みは九州で効果を上げている。防犯グッズの唐辛子スプレーをぶっかけるのも効果があるかもしれない。

 では丸腰でイノシシに出合ってしまったら、どうすればいいのか。この猟師は「屋内に逃げ込むこと。逃げ込む場所がなければ、高いところに上ること。単純だけど、それしかないだろう」と話す。

 山中で遭遇したら、木の枝に飛びつくことだ。だが、下りてくるのを木の下でイノシシが待ち受けることもあるというから、長期戦に備える心構えも必要だろう。