台湾の蔡英文総統が先日、米国産の牛肉と豚肉の輸入について、来年1月1日に解禁すると発表した。米国との関係強化策の一環で、自由貿易協定(FTA)など経済協定の締結に意欲を示している。

 台湾は米国産の牛肉と豚肉に添加物が使用されていることや、牛海綿状脳症(BSE)への懸念などから輸入規制をしてきた。蔡総統は「安全性確保に問題がない」としている。

 この政策の転換に、台湾では「国民の健康を危険にさらす政府ってどうなんだ」などとデモが起きている。

 台湾の30代の酪農業者は「米国産の牛豚肉が入ってきてしまうと、今、私が育てて作った牛肉などが売れなくなってしまいます。そうなると、今までこの仕事しかしてこなかったものですから、どう生活していけばいいのでしょうか。政府は国民を見捨てる気なのですかね」と語る。

 蔡総統は台湾の生産者を支える基金設立を表明しているが、現状でも台湾の牛豚肉市場は飽和状態だという。

 また、デモを行っている人たちなどが疑問視しているのは、ダブルスタンダードだ。

 台湾事情通は「民主進歩党(民進党)当局が、もし新たに米国産の豚肉と牛肉を輸入したら、明らかに“ダブルスタンダード”になります。以前、国民党が政権与党の時(馬英九前総統)に、米国産の豚肉と牛肉を輸入しようとしたら、野党だった民進党は反対の大キャンペーンを決行し、多くの民衆の不満を誘発しました。そのため、輸入計画が頓挫した経緯があるんです。民進党の蔡政権が米政府の歓心を買うために、かつて自分たちが批判した策を自ら講じることになれば、政権の自己否定にもつながりますよ」と指摘する。